2026年2月15日にNHKで放送された「日曜美術館アートシーン」の展覧会紹介の内容をまとめました。
*画像出展元:テレビ番組「日曜美術館 アートシーン」より
没後40年
荻須高徳リトグラフ展
―稲沢市荻須記念美術館コレクション―

モンマルトルの路地を抜けた先に、一際目を引く赤いひさしのカフェが見えてきました。
古びたアーチの向こうからパリっ子たちの笑い声が聞こえてきそうです。
エッフェル塔や凱旋門には目もくれず、パリの街角や路地裏を描き続けた日本の画家がいます。

荻須高徳(おぎすたかのり、1901-1986)。
1927年、25歳の時にフランスに渡りました。
50年以上をパリの地で過ごし(戦時中を除く)、数多くの作品を残しました。

そんな荻須高徳の石版画、リトグラフを中心とした展覧会が開かれています。

荻須は渡仏の翌年にはサロン・ドートンヌに入選。
次第にパリで高い人気を獲得していきました。
そんな荻須ですが、最初からリトグラフを制作していたわけではありません。

当初、荻須が精力的に描いたのは油彩画でした。
こちらはモンマルトルの町中を描いた作品。

薄汚れた道と、歴史を経て黒ずんだ石壁。
そこにバランスよく配置された、温かみのある色彩。
人々の生活や息遣いが感じられます。

荻須が本格的にリトグラフに取り組むようになったのは66歳を過ぎてから。
こちらは赤い壁が鮮やかな街角の靴屋を描いた1枚。

つるつるとした質感の1階の店の壁。
それに対して2階の壁はざらつきが表現され、質感の違いを見事に表しています。
荻須はリトグラフの特性を見事に使い分けていました。

リトグラフは石版にクレヨンなど油性の画材で絵を描きインクをのせて刷る版画です。

木版画のように彫るのではなく、版面に薬品を塗り、絵の部分にだけ油性インクをのせることで作られます。

異なる色のインクをのせて繰り返し刷ることで、多色刷りが生まれる仕組みです。

「当時はピカソ、シャガール、ブラックといった著名な画家たちもリトグラフを制作して人気を集めていました。リトグラフは油彩画と違って、絵の具を厚く塗り重ねることができません。色が混ざらないので、明るく鮮やかな色彩と透明感のある印象が特徴になります」

「油彩画で培ったデッサン力、優れた色彩感覚、リトグラフの技法を駆使する探究精神っていうものがありますので、それらが合わさったのが荻須のリトグラフの魅力かなと思います」(学芸員・渋谷氏)

こちらは雪が降った後のパリ。
橋や街灯の黒と、雪の白とのコントラストが印象的です。

雪は踏み締められ、ひとしきり降雪があったあとの風景だと分かります。

橋の上には赤いバス。
静けさを感じる詩情豊かな作品です。

パリを愛した画家がリトグラフで表現した街の色。
東京の八王子市夢美術館で2026年3月22まで開催です。
今回の記事はここまでになります。
