2020年3月31日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#342 世界初!奇跡の大規模展「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」前編〜ルネサンスって何?!英国が誇る国宝級名作で西洋美術が丸わかり!〜】の回をまとめました。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
今回はパート8です。前回のパート7はこちら☚からご覧頂けます。
*開幕が延期となっております。詳細は展覧会公式HPをご確認ください。
《トマス・コルトマン夫妻》
《トマス・コルトマン夫妻》1770-72年頃
ジョゼフ・ライト・オブ・ダービー
ロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵
この作品もパート7でご紹介したヴァン・ダイクの作品同様にダブル・ポートレイト(二重肖像画)の様式で描かれています。
モデルはタイトルにもあるトマス・コルトマンとその妻のメアリ・バーロウで、二人が結婚してから約一年を経た頃に描かれました。
作者はジョゼフ・ライト・オブ・ダービー(Joseph Wright ‘of Derby’、1734-1797)です。
彼はイギリスの工業都市のダービーで活躍しました。
競馬で有名な所ですね!
描かれたのはイギリスの1770年代という事で、先のヴァン・ダイクから130年ほど経った頃になります。
18世紀の中頃から終わりにかけてイギリスで起こった”産業革命”により、この時代2つのタイプのお金持ちが存在するようになります。
1つは、昔からある名家の貴族。
もう1つが一代ないしは二代で財を築いた新興の資本家や地主、成金などです。
この2つのタイプのお金持ちが、火花を散らし「自分たちの方が偉いんだぞ」という風に競い合っていました。
そしてそれをアピールするツールとして、「肖像画」が使われたのです。
モデルのトマス・コルトマンは後者、この時代に出てきたお金持ちになります。
そしてそんな彼らから生まれた新しい肖像画のタイプが「カンヴァセーション・ピース」と呼ばれるものです。
カンヴァセーションは”conversation”で「会話」という意味、つまり「会話作品」という事になります。
パート7でご紹介したヴァン・ダイクの作品と比較すると、確かに二人の人物が描かれていますが、互いの存在は意識されておらず、視線も交わっていません。
一方こちらの作品では、会話こそしていないもののお互いの存在を意識した描かれ方をしています。
夫は妻の膝元に手を掛けて、妻の方は夫を見つめています。
このように新興のブルジョワジー達は家柄など余計な縛りがなかったので、リアルで自然な雰囲気で描かれることを望んだのです。
それまでにはない「話しているような自然な雰囲気」が求められました。
その”自然な雰囲気”という事で、この作品では描かれている場所も自邸の前で描かれています。
二人の人物の視線が交わらない代わりに、画面左下の馬と犬が見つめ合っています。
この愛嬌のある表現で、構図全体が安定する効果を生んでいます。
画家とモデル夫妻の関係
画家ジョゼフ・ライトとモデルのトマス・コルトマン夫妻は友人関係でありパトロンでした。
ですので、この作品ではちょっとした遊び心が表されています。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館 #342」より
男性のポケットにコインが入っているのが、そのまま描かれています。
ズボンがパツンパツンなので、コインが浮き出てしまっているのです。
”描かなくても良い所”をあえて描いた。
このような遊びができるほど、画家にとっても信頼のできる相手だったというのがここから分かります。
ジョゼフ・ライトのその他の作品
ジョゼフ・ライトはロンドンで美術を学んだのち、画業の大半をダービーで過ごします。
本作品のような肖像画を主に描いて活動しましたが、明暗の対比を見事に表現した作品でも知られており、同じロンドン・ナショナル・ギャラリーにこのような傑作も収蔵されています。
(*今回の「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」には出展されていません)
《空気ポンプの実験》1768年
ジョゼフ・ライト・オブ・ダービー
ロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵
これはまた見事な作品ですね~!
いかがでしたでしょうか。今回のパート8はここまでです。
最後までご覧頂きありがとうございました♪
パート9も是非ご覧ください。こちら☚からどうぞ(*^^*)
コメント
[…] パート7は一旦ここまでです。 つづくパート8でも同じく、イギリスの肖像画作品を取り上げます。 こちら☚からご覧頂けます。よろしければどうぞ(*^^*) […]
[…] 番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。 今回はパート9です。前回のパート8はこちら☚からご覧頂けます。 […]