2022年4月26日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#405 東京国立近代美術館「没後50年 鏑木清方展」〜幻の最高傑作が揃い踏み!“美人画”に込められた温かいまなざし〜】の回をまとめました。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
『没後50年 鏑木清方展』
今回は東京国立近代美術館で2022年5月8日まで開催の『没後50年 鏑木清方展』についてまとめていきます。
鏑木清方(かぶらききよかた、1878-1972)といえば近代美人画の大巨匠として知られ、1954年には文化勲章も受章している大画家です。
2022年は清方の没後50年の節目の年という事で、この年に代表作が数多く揃った大回顧展が実現しました。
東京国立近代美術館の主任研究員である鶴見香織氏は、今回の展覧会の見どころは”2点”あるといいます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
その一つがこちらの《築地明石町(つきじあかしちょう)》という作品です。
じつはこの作品は長らく行方不明となっており、2018年に再発見されたばかりなのです。
その翌年の2019年に44年振りに公開されましたが、その時は今回ほど大規模な展覧会ではなかったといいます。
今回の『没後50年 鏑木清方展』では、全国から集めた他の清方作品と並べることでこの《築地明石町》がどういう風に見えるのか?
そこを知ることができるといいます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
また《築地明石町》は三部作となっており、今回他2作と並んで展示されているのも注目ポイントです。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
もう一つの見どころはこちらの《ためさるゝ日》という作品。
清方自身も「会心の作」と言ったとされるこの作品が、このように二幅揃った状態で公開されるのが40年振りなのです。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
清方は同じ頃に京都で活躍した上村松園と並んで、「東の清方、西の松園」と呼ばれるほどの美人画の大家でした。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
しかし清方の画業を見ると、単に美人画というジャンルに収まらない作品も数多く残しています。
「美人画の中に”生活の手触り”みたいなものを書き込んでいる。彼の作品では人物の形だけでは納まらなくって、背景にも何か描き込みたい。その人の人生みたいなものを描き込みたい。そういう風な意識が強いように思います」(主任研究員・鶴見香織氏)
《初冬の雨》《十一月の雨》
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
こちらの《初冬の雨》という作品は、清方が18歳の時に描いた作品です。
清方の画業のスタートは13歳の時、浮世絵師の水野年方(みずのとしかた、1866-1908)に弟子入りしたところから始まります。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
水野年方は歌川玄治店派(げんやだなは)に属しており、師匠の名前から一字ずつ取っていくのが伝統になっていました。
清方の”方”の字は師匠・水野年”方”から受け継いだものだったのです。
いわば浮世絵の流れを組む流派に属していた清方ですが、当初は”挿絵画家”としてキャリアをスタートさせます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
この《初冬の雨》で描かれているのは、明治の下町の光景です。
場所は何かお店の前のようですが…
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
「〇やき」と書かれたこのお店。じつは焼き芋屋さんなのです。
〇やきとは焼き芋を一つ丸ごと焼いたものを指す言葉だったのです。
明治の下町では、各町ごとに焼き芋屋があったと清方自身話しており、また清方も焼き芋が好物だったといいます。
しかし貧しかった清方は一本の丸焼きは買うことができず、代わりに”切り焼き”をよく食べていたのだとか。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
その《初冬の雨》と並んで展示されているのがこちらの《十一月の雨》という作品です。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
この作品でも「〇やき」という看板があり、さらにその後ろにはお芋が積んであるのが見えます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
画面右側に見えるのは「絵双紙屋(えぞうしや)」と呼ばれるお店で、浮世絵などを販売しているところです。
清方も幼い頃に絵双紙屋へ足繫く通っては、色々なものを買って楽しんでいたといいます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
じつはこの《十一月の雨》は清方77歳の時の作品です。
この2つの作品の間に約60年経っているんですね!
技術の向上や手法の変化こそ見られますが、テーマやモチーフには変化がないように見えます。
「60年も経って同じところに戻っていく。それが清方さんなんですよね」(鶴見氏)
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
つまり《十一月の雨》は、77歳当時(昭和30年)の風景を描いたのではなく、60年前の光景を思い起こして描いた作品なのです。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
”江戸情緒がわずかに残る、明治の東京”を愛した清方は、生涯その光景を描き続けたのです。
今回の記事は一旦ここまでになります。
パート2へと続きます。
*現在記事作成中です。