2021年10月5日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#386 世界中のストリート・アートを完全再現!「バンクシーって誰?」展~天才?反逆者?全てが謎!アート界の異端児の、その正体に迫る~】の回をまとめました。
今回の記事はパート5になります。
前回のパート4はこちら☚からご覧ください。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
バンクシーとパレスチナ
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
今回の記事ではバンクシーの活動の中でも重要な拠点の一つとされるパレスチナ、そこに描かれた作品についてまとめていきます。
バンクシーは2003年からパレスチナ自治区のベツレヘムで作品を描き始め、以降何度も足を運んでいます。
時にはイスラエル兵に銃口を向けられながら作品を制作することもあったといいます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
ここには「テロリストの侵入を防ぐ」という名目で造られた、高さ8メートル・全長700キロにも及ぶ分離壁があります。
壁の近くには監視の兵士がいたり、有刺鉄線がめぐらされていたりと、非常に緊張感のある場所なのです。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
2017年、バンクシーはその分離壁の目と鼻の先の場所に元々あった建物を利用して、ホテル『The Walled Off Hotel』をオープンします。
このホテルの窓から見えるのは分離壁だけ。
そのことから「世界一眺めの悪いホテル」と呼ばれています。
もちろん実際にホテルとして営業しており、これまで10万人以上の人が訪れたといいます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
バンクシーがこの緊張状態にある場所にホテルつくった理由。
それは一向に進展しないパレスチナ問題に人々の目を向けさせるため。
実際に世界各地から観光客や報道陣が来ることで、注目が集まります。
またそれによって地元の経済を潤す効果があります。
さらに色々な国の人が利用している以上、イスラエルがここ攻撃することができません。
(攻撃によって第三国の人が死傷した場合、国際問題に発展するため)
まさに「人間の盾」なのです。
『The Walled Off Hotel』
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
今回の『バンクシーって誰?展』ではそのホテルの様子も再現展示されています。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
中に入るとホテルの窓際の席が再現されており、そこにバンクシーが分離壁に描いた作品が次々と映写されています。
こちらの壁画では、少女が沢山の風船を手に分離壁を越えようとしています。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
こちらの作品では、分離壁の少しの隙間を天使がこじあけようとしています。
《Flower Thrower》
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
こちらは2005年にパレスチナで描かれた、バンクシーの代表作ともいえるグラフィティです。
今回の展覧会では実物大のサイズ(高さ約5メートル)で再現されています。
「このレベル(サイズ)の作品を描けるということは、(バンクシー)はひとりじゃないよね」(山田五郎氏)
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
《Flower Thrower》、日本語に訳すと「花を投げる人」という意味のこちらの作品。
今まさに花束を投げようとする、そんな躍動感が感じられます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
この作品はベツレヘムにあるガソリンスタンドの壁に描かれました。
描かれているのはパレスチナ市民がイスラエル軍に対して、投石や火炎瓶で抵抗しようとする姿です。
しかし、手にしているのは石や武器ではなく”花束”です。
バンクシーの伝えたい、分かりやすいメッセージが込められているのです。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
《Flower Throuwer》の男性が花束を投げようとしている方向が、まさに分離壁の方角になっています。
《Giant Kitten》
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
《Flower Thrower》が描かれたのは、パレスチナ自治区のヨルダン川西岸地区ですが、もう一ヵ所「ガザ地区」という場所があります。
よくニュースで耳にするところですね!
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
2014年、イスラエル軍がガザ地区を約7週間に渡り空爆。
約1万8000の建物が倒壊し、死傷者も1万3000人以上に上りました。
その空爆があった翌年の2015年、バンクシーはガザ地区を実際に訪れ、作品を残しています。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
それがこちらの《Giant Kitten》という作品。
空爆でわずかに残った外壁に描かれています。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
壁の前には鉄くずのかたまりが置かれています。
これは実際に現地の壁の前に置かれていたもので、バンクシーはここからインスピレーションを受けたと考えられます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
鉄くずを毛玉に見立て、まるでその毛玉で子猫が遊んでいるような、そんなグラフィティ作品をここに描いたのです。
このように特定の場所でのみ意味を成すアートを「サイトスペシフィック・アート」と呼びます。
確かに他の壁だったらただの可愛い子猫の絵ですもんね!
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
壁に描かれた可愛い子猫の絵を、この地を訪れた人が写真に撮ります。
そしてそれがSNS等を通じて、空爆の惨状とあわせて拡散されます。
実際に、バンクシーがこの絵を描いた影響で、国際機関が支援に乗り出すという動きも生まれました。
バンクシーは自ら現地に赴き、ちゃんと体を張ってアートを制作しています。
そしてそのアートを通じてメッセージ発するだけではなく、世界をも動かしているのです。
今回の記事はここまでになります。
パート6へと続きます。
【ぶらぶら美術・博物館】「バンクシーって誰?」展⑥【美術番組まとめ】
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[…] 今回の記事はパート6になります。 前回のパート5はこちら☚からご覧ください。 […]