2020年2月18日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#337 誕生!アーティゾン美術館「開館記念展」〜ブリヂストン美術館が生まれ変わって新名所に!おなじみの名画から初公開作品も!】の回をまとめました。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい。
イントロダクション
さて本日ご紹介致します「アーティゾン美術館」。
元々は「ブリヂストン美術館」という名称でしたが、2015年からビルの建て替えに伴い休館していました。
今回5年の建て替え期間を終えて、2020年1月に地上23階建てのミュージアムタワー京橋がオープンしました。
7回より上はオフィスフロアになっており、1階から6階が美術館フロアとなっています。
名称のアーティゾンは、「ART」と「HORIZON(地平)」を掛け合わせた造語で「ARTIZON」です。
「時代を切り開くアートの地平」という意味が込められています。
アーティゾン美術館を運営する、石橋財団のコレクション総数は約2800点で、今回の開館記念展ではその中から厳選された206点を展示しています。
さらに今回は休館している間に新たに購入された名画31点も初お目見えしており、ブリヂストン美術館時代に来館された方でも、新たな発見のある展覧会となっています。
内装について
1階はカフェ、2階にはミュージアムショップが入っておりこちらはチケットが無くても無料で利用することができます。
3階にありますロビーは高さ18メートルの吹き抜けになっています。
アーティゾン美術館には吹き抜けが全部で4つあります。
このロビーには、巨大なオブジェが展示されています。
「泡」をイメージしたこのオブジェは、「トネリコ」というデザイン事務所が手掛けました。
「トネリコ」は米谷ひろし、君塚賢、増子由美の3人により、2002年に設立されたデザイン事務所で、ロフトの内装を手掛けている事でも有名です。
今回、リニューアルオープンしたアーティゾン美術館の全体のインテリアデザインも「トネリコ」が手掛けています。
デジタル・コレクション・ウォール
館内には、「デジタル・コレクション・ウォール」と呼ばれる、チームラボと共同制作した最新システムがあります。
画面いっぱいに収蔵作品が映し出されており、それをタッチすると作品の詳細が見られるようになっています。
ただ絵画を鑑賞するだけでなく、このような感覚的に楽しめるのはすごく良いなと思いました。
実際に小学生のお子さんなどは、たいへん喜んでこのコレクション・ウォールで遊んでいたといいます。
こちらは展示順路の途中にありますので、そこまで見てきた作品を振り返ったり、このあと見ようと思っている作品を予習したりすることができます。
*展覧会に出ている作品ではなく、石橋財団がコレクションしている作品が表示されます。
《自画像》エドゥアール・マネ
《自画像》1878-79年
エドゥアール・マネ
アーティゾン美術館の展示フロアは4階から6階となっており、展示順路は6階から下に降りていくようになっています。
この作品は6階のフロア、入ってきてすぐの所に展示されています。
「印象派の父」と呼ばれたエドゥアール・マネの自画像です。
マネの自画像は実は2点しか残されておらず、その内の一枚が今作です。
2019年の「松方コレクション展」で見ました。
アーティゾン美術館の所蔵作品だったのですね!
ちなみにもう一枚の自画像がこちら。
《パレットを持った自画像》1879年
エドゥアール・マネ
個人蔵
*アーティゾン美術館の収蔵作品ではありません
こちらの《パレットを持つ自画像》はなんと個人蔵で、2010年に2240万ポンド(約30億円)で落札されています。
ということは、アーティゾン美術館のこの自画像も
それくらいの額になるという事なのでしょうか⁇
さて、アーティゾン美術館の方の自画像作品に話を戻しましょう。
暗い無地の背景は、当時パリで流行していたスペイン絵画からの影響が考えられます。
よく見ると、上着のボタンの上下が普通の紳士服とは逆に描かれています。
これは鏡を見ながらこの自画像を描いたため、左右が反転してしまっているのです。
この時代は左右を戻して元通りにするのではなく、鏡の反転した状態のまま描くのが普通でした。
顔の部分は丁寧に仕上げられている一方で、衣服は荒いタッチで描かれ、そこには塗り残しも残されています。
この時代の絵画は綺麗に、筆跡を残さないように描くのが当然の時代でした。
《聖母子と洗礼者ヨハネ》1875年
ウィリアム・アドルフ・ブグロー
*アーティゾン美術館の収蔵作品ではありません
こちらは同じ頃にフランスの画家、ウィリアム・アドルフ・ブグローによって描かれた作品です。
彼は当時のアカデミズム絵画を代表する画家でした。
すなわち、これが当時の美術の規範、手本される絵画だったのです。
それを考えると、いかにマネが当時画期的な取り組みをしたのかが分かります。
そんなマネの作品は、当時の若い画家たちを刺激し、彼らが「印象派」を立ち上げます。
アーティゾン美術館にも印象派の画家のモネやセザンヌの作品が収蔵されています。
続いてはそんな印象派の画家で忘れてはならないルノワールの傑作をご紹介致します。
《すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢》ルノワール
《すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢》1876年
ピエール=オーギュスト・ルノワール
第一回印象派展(1874年)から2年後に描かれたルノワールの作品です。
当時ルノワールはまだそこまで売れっ子ではありませんでした。
この作品はシャルパンティエという出版社の社長がパトロンとなり、注文されたものでルノワールの意欲作と言えます。
描かれているのは当時4歳のジョルジェットです。
ルノワールは、1880年代に入るとイタリアに旅行したのをきっかけに古典主義へと回帰していきますが、この時代はまだバリバリの印象派の画家でした。
よくよく見ると影の表現に青い線が使われており、「影にも色がある」という印象派の姿勢が反映されています。
このシャルパンティエ家からは最終的に7枚の絵画の注文を受けますが、この《すわるジョルジェットシャルパンティエ嬢》はその最初の一枚です。
ここで気に入られれば注文も続きますし、気に入られなければこの後は注文されないという、ルノワールにとって重要な一枚でした。
と、パート1はいったんここまでです。
つづくパート2では、新たに収蔵され今回の展覧会で初公開される作品をご紹介致します。
【ぶらぶら美術・博物館】アーティゾン美術館②【美術番組まとめ】
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