2022年5月22日にNHKで放送された「日曜美術館アートシーン」の展覧会紹介の内容をまとめました。
*画像出展元:テレビ番組「日曜美術館 アートシーン」より
大英博物館 北斎―国内の肉筆画の名品とともに―
(サントリー美術館)
葛飾北斎が70代で手掛けた浮世絵版画シリーズ『冨嶽三十六景』。
海を渡りヨーロッパでも人気となりました。
最も有名な『神奈川沖浪裏』、通称「グレートウェーブ」。
北斎はプルシアンブルーの濃淡で立ち上がる大波の迫力を表現しました。
現存する中でも屈指の美しさを保つこの版画は初摺に近いといわれ、輪郭線もくっきりしています。
800点を超える世界有数の北斎コレクションを誇る大英博物館。
選りすぐりのおよそ100点が来日しています。
コレクション第一号はこちら。
北斎が亡くなって11年後の1860年に購入されました。
その後もコレクターや研究者による寄贈や購入によって作品は増えていきました。
1881年に収蔵した肉筆画。
北斎壮年期の傑作で金をふんだんに使った豪華な作品です。
強弓の使い手、源為朝(みなもと の ためとも)が3人の島の男たちと力比べをしている場面です。
北斎が挿絵を描いた曲亭馬琴の『椿説弓張月(ちんせつゆみはりづき)』。
この肉筆画はその大成功を祝して版元が発注しました。
「大英博物館が博物館として後世に北斎作品を残していこうという意識がかなり早くからあったというのは、世界的に見てもたいへん珍しいことかと思います」
「特に『為朝図』に関しては、たとえばその髪の毛の細かい線ですとか、あとはこの筋肉を描く力強い線ですとか」
「あとはこの波の部分の繊細な描写など、描く対象によって全く筆運びというのを変えておりまして、絵画技術の粋というのが尽くされているかと思います」
北斎は広重に並ぶ花鳥画の名手で、その版画シリーズも出しています。
風を受けてたわむ芥子。
この動き、何かに似ていませんか?
そう「グレートウェーブ」。
2つの作品の構図の共通性が指摘されています。
肉筆画のような荒々しい輪郭線。
色使いは繊細で、花の質感を見事に表しています。
こちらは百人一首を乳母が子供に絵解きするように分かりやすく伝えるシリーズ。
山里のことさら寂しい冬を詠んだ一首。
しかし描かれたのは、焚火を囲む陽気な猟師たち。
絵解きが難解な上に豪華な作りのため、27図で打ち切りになったと考えられています。
北斎はほぼ100図の版下絵を既に完成させていました。
残された版下絵の入念な描き方から、シリーズにかけた思いの強さがうかがえます。
80代の北斎は肉筆画に心血を注ぎました。
亡くなる2年前、88歳の傑作。
驚異的な描写力で鴨が描かれています。
水を含んで丸まった背中の羽。
鋭い観察眼が捉えた命です。
国内の肉筆画の名品も見られます。
疫病を表すともいわれる鬼。
弘法大師は経典を手にし、鬼と対峙しています。
東京・足立区の西新井大師に奉納した北斎最大級の作品です。
この展覧会は東京・港区のサントリー美術館で6月12日まで。
今回の記事はここまでになります。