2020年3月31日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#342 世界初!奇跡の大規模展「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」前編〜ルネサンスって何?!英国が誇る国宝級名作で西洋美術が丸わかり!〜】の回をまとめました。
2020年4月10日現在、新型コロナウイルスの感染予防対策により開幕延期となってしまっています「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」。
西洋美術の展覧会では、2020年で一番!と言っても過言ではない素晴らしい展覧会です。
200年の歴史を誇るロンドン・ナショナル・ギャラリーにおいて、史上初の大規模な外部への貸し出しになります。
ですので全61作品すべてが、日本初公開となっています。
また山田五郎氏曰く「二度と来ないであろう作品だらけ」との事。
なおさら開幕延期が悔やまれます。。。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
《聖ゲオルギウスと竜》
《聖ゲオルギウスと竜》1470年頃
パオロ・ウッチェロ
ロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵
初期ルネサンスの画家、パオロ・ウッチェロ(Paolo Uccello、1397-1745)の作品です。
油絵で描かれていますが、この当時油絵は最先端の技法でした。
なんだか絵本のような、ファイナルファンタジーみたいな変わった絵ですね!
現在残っている作品が非常に少なく、もしかすると日本に彼の作品がくるのは今回が初めてかもしれないとのことです。
しかし、西洋美術の歴史を押さえる上で外せない重要な画家と言えます。
この作品はキリスト教の聖人である聖ゲオルギウス(一番右端)の戦いの場面を描いています。
囚われていた姫を助けるために、聖ゲオルギウスが今まさに竜に一撃を放った場面です。
聖ゲオルギウスは英語で言うと、”St. ジョージ”となります。
今のジョージアという国はこの聖ゲオルギウスが守護聖人であることに由来します。
描いている場面はキリスト教の物語ですが、あまりキリスト教、宗教画っぽくありません。
例えば、聖ゲオルギウスは聖人なので、普通は背後に円盤のような光臨が描かれます。
画像出展元:wikipedia(Saint George)より
こんな感じにですね。
ところがこのパオロ・ウッチェロの作ではそのような描写はありません。
聖書の場面を想像したままに描くのではなく、現実に即して(つまり円盤を背負った人なんて誰も見たことがない)表現しています。
遠近法オタク?!
このパオロ・ウッチェロは山田五郎氏曰く「遠近法オタク」との事。
彼の生きた時代、初期ルネサンスはまだ遠近法は完成しておらず、いわばその途上で展開を探っていた時代になります。
この《聖ゲオルギウスと竜》でも、消失点から放射状に広がる透視図法が用いられています。
そして面白い事にこの作品には3つの消失点を用いて遠近感を表現しています。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館 #342」より
上の図の先ず白い線をご覧ください。
遠くの山を消失点に透視図法が用いられています。
中央に不自然に置かれた芝生は、この線遠近法を意識させるためにあえて置かれています。
次に青い線を見て頂くと、こちらは聖ゲオルギウスの遠近感を表すために。
そして最後のオレンジ色の線は竜の遠近感を出すためにと、3つの透視図法が使われています。
画家:パオロ・ウッチェロ
パオロ・ウッチェロはイタリア・フィレンツェの郊外で生まれました。
金工家のロレンツォ・ギベルティの元で修業します。
絵画構図の基本はドナテッロからも影響を受けています。
ウッチェロは《聖ゲオルギウスと竜》に見られるような数学的な遠近法ばかり考えているような画家でした。
その代わりといっては何ですが、人の表現力が乏しいと言えます。
人間を描くよりも、遠近法についてこだわる方を選んだ画家だったのです。
ウッチェロというのは元々あだ名で「鳥」という意味でした。
なぜそのようなあだ名がついたかと云うと、彼自身「鳥」の絵ばかり描いていたと言います。
しかし残念ながら彼の描いた鳥の作品は残っていません。
この初期ルネサンスの頃、絵画の多くは板に描かれていました。
板というのは温度湿度の影響を受けやすく、湾曲したり割れてしまう事があります。
しかしこの《聖ゲオルギウスと竜》はこの時代には珍しく、カンヴァスに描かれています。
ですので長い年月を経ても状態に大きな変化がなく、また今回日本まで持ってくることができたといいます。
ルネサンス絵画とは?
展覧会の第一章(Chapter 1)は「イタリア・ルネサンス絵画の収集」からスタートします。
ナショナルギャラリーのコレクションは、この初期ルネサンスの作品が充実しています。
それは画家でもあった初代館長のイーストレイクが、イタリアに長期滞在していた時に、
当時あまり評価が確立していなかったこの初期ルネサンスの良さに気づくのです。
それまで「初期ルネサンス」というのは”完成されていない芸術”として評価されていましたが、そうではなく、”その中にも良さがある”という風に最初に気が付いたのが初代館長のイーストレイクでした。
いわば「初期ルネサンス」の再評価のきっかけをつくったと言えるのです。
ところで、そもそもルネサンスというのはどういう意味かご存じでしょうか。
ルネサンスという単語自体はフランス語で「再生」を意味します。
ではこの時代に何が再び生まれたのかというと、「古代ギリシャ・ローマ文化」が再生したのです。
ヨーロッパでは長きにわたり、中世と呼ばれる時代が続きました。
そこでは教会が一番重要な社会の基盤であり、神や社会が中心であるという世界観でした。
しかし中世の人たちも段々と違う世界を見たり、古代の遺物が発見されたりしていく中で「今とは違う時代」があったことに気づくのです。
それが「人間中心の世界観」だったのです。
ルネサンスの人たちはキリスト教に支配された世界感から目覚めるのと同時に、人間中心の古代の価値観に転換していった。
それがルネサンス(再生)なのです。
では具体的に美術の世界ではどういう変化があったのでしょう。
特徴としては「リアルに描かれる」という変化が起きます。
中世の美術の世界というのは「神様が世界をどう見たか?」という観点でした。
なので人物の大きさは神学上の大きさでした。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館 #342」より
例えば一番重要なイエス様が大きく描かれ、市民は小さく描かれるといった具合にです。
それがルネサンスになると偉いか偉くないかでサイズは変わらず、手前の人が大きく遠くの人は小さいといった風に描かれるようになります。
つまり「目に見える世界をそのまま絵画に表現」されるようになってくるのです。
そこから「遠近法」や「人体の解剖学的な正確さ」が追求されていくようになりました。
今日に続く西洋絵画の基本はこのルネサンス期に生まれたのです。
しかしこのタイミングでキリスト教がなくなっていく訳ではなく、それまでの宗教画もルネサンス期の特徴を取り入れてリアルになっていくという変化(例えばすごく人間っぽいイエス様など)が生まれるのです。
パート1は一旦ここまでです。パート2へと続きます。
こちら☚からご覧ください(^^♪
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