2018年1月28日にNHKで放送された「日曜美術館」の【熱烈!傑作ダンギ クリムト】の回をまとめました。
今回の記事はパート2になります。
前回のパート1はこちら☚からご覧頂けます。
番組内容に沿って、+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
クリムトが使った「金」
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
女子美術大学教授の坂田勝亮教授によると、「金」というのは非常に光り輝くので、見る人の目をひきつけるという効果があるといいます。
《接吻》に描かれているのは、まさに”光り輝く二人”。
この二人が”愛し合っている”っていう事を、金を使う事によって、より強く見ている者に訴えかけているのです。
じつはこの時代はまだ「愛」や「愛し合う男女」といったテーマを赤裸々に描く事はタブーであり、神話の一場面として描かれるのが許されるだけでした。
クリムトはそんな美術の決まり事の中で、”金”を使って男女の愛を描こうとしたのです。
坂田教授は番組内で次のように述べています。
「自由に好きな相手を決めて、その人と結婚するんだという事は誰も考えていなかった時代。クリムト以前に愛し合う二人を描いた作品は全然ない。非常に衝撃的な作品だったと思います」
現代のように多くの自由がなく、様々な束縛があったこの時代。
クリムトは自分の表現したいものを、自由にキャンバス上に表現したのです。
代表作でありながら、クリムトの革新性がよく表れた傑作です。
クリムトの私生活
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
クリムトは私生活においても、型破りな生き方を貫いていました。
彼のアトリエには裸同然の女性モデルが何人もおり、彼女たちとの間に少なくとも14人の子どもがいたといいます。
クリムトは「”愛”や”性”といったものは隠すべきだ」という保守的な社会にも反抗するかのように生きたのです。
スタジオゲストのファッションデザイナーのコシノヒロコ氏は次のように述べています。
「クリムトは感受性が強い。そして性欲も強い。こういったエロティシズムに対して全然興味のない人は絵なんて描けませんよ。
すごくそういう情熱を沢山持っているからこそ、自分の中で持っているものを、もうほんとに表現したくなっちゃうんですね」
何人ものモデルと関係を持ち、一見破綻した、何かが欠落した人格のようにも思えますが、クリムトは純粋に本能のままに生きたのです。
破綻した人格であったら、こんな素晴らしい芸術は残せないでしょうね。
《接吻》に用いられた金の表現
クリムトが自身の作品多用した”金”。
そこに注目していくと、日本の伝統工芸に通じる「金箔の技」が関係しているといいます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
京都で金箔や銀箔を装飾する箔画作家の野口琢郎さんです。
伝統的な金箔の技法を用いた作品を発表しています。
野口さんはクリムトの金箔の使い方は「日本の昔からの表現に近い」といいます。
人物付近で使われている”金”は強く輝く、いわばギラッと反射するような箔が押されています。
それに対して背景は同じ”金”でも反射の弱い処理をしているというのです。
クリムトは背景と人物の箔の押し方を変えて、中央で抱き合う二人を強調して、遠近感を出しているというのです。
野口さんによると金箔はその貼り方によって、輝きに違いを出す事ができるといいます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
金箔は平面のまま貼ると、光が当たった時に最も強く輝きます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
その一方、細かくすると輝きは弱くなり、砂子(粉末状にした金箔)だと最も弱くなります。
砂子は日本の伝統的技法です。
《接吻》でクリムトは、人物にはその存在が際立つように反射の強い箔の貼り方をし、逆に背景には砂子を使ってその輝きを抑えて、かすみがかったような遠近感を演出したのです。
クリムトの父親は金細工の職人でしたので、このような表現方法は父親からの影響もあったかもしれません。
こうして金一色で、絵の中に無限の広がりが生まれました。
《オイゲニア・プリマフェージの肖像》
《オイゲニア・プリマフェージの肖像》1913-14年
グスタフ・クリムト
豊田市美術館蔵
こちらは愛知県の豊田市美術館が所蔵するクリムト作品です。
モデルのオイゲニア・プリマフェージは銀行家のオットー・プリマフェージの妻であり、かつては女優業をしていた事から、ウィーンの社交界でもよく知られた存在でした。
また、オットー・プリマフェージはクリムトのパトロンでもありました。
クリムトはそんな重要なパトロンから依頼を受けて、この《オイゲニア・プリマフェージの肖像》を描きました。
花畑のような背景に描かれているのは、まっすぐこちらを見つめる女性。
全体的に華やかで、幻想的な雰囲気が漂います。
女性は西洋の伝統的なドレスから解放され、ゆったりとした、当時としては斬新な装いに身を包んでいます。
オットー・プリマフェージと妻のオイゲニア・プリマフェージ
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
この時代、彼らのような新興の富裕層、ブルジョワが王侯貴族に代わって台頭してきました。
彼らは新たな時代を築こうと、新しい芸術を積極的に支援しました。
そんなブルジョワにとって、クリムトの斬新な芸術は非常に魅力的であり、多くの肖像画の依頼(その多くは自分の妻を描いて欲しいというもの)が舞い込みます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
そこでクリムトは斬新なドレスで身を包んだ女性たちの姿を、次々と描いていきました。
今回の記事は一旦ここまでです。
続きのパート3では、クリムトとファンションの関係性について見てまいります。
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