【ルーヴル美術館展】オランダ絵画【日曜美術館】

日曜美術館

2023年4月9日にNHKにて放送された「日曜美術館」の【まなざしのヒント ルーヴル美術館展】の回をまとめました。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。

今回の記事では【17世紀 オランダ絵画】についてまとめていきます。

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《部屋履き》

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

今回取り上げる作品はサミュエル・ファン・ホーホストラーテンが描いた《部屋履き》という作品。
17世紀のオランダで描かれた風俗画です。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

舞台は当時のオランダの一般家庭の室内です。
その空間は3つに分かれています。

家具や日用品などが描かれ、誰かがここで暮らしている様子は伺えますが人物の姿はありません

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

この絵が描かれた当時のオランダは”プロテスタント”の国でした。
プロテスタントは「偶像崇拝」を禁止していることから、当時のオランダは他のヨーロッパの国とは違い、宗教画はほとんど描かれませんでした

そこでこの《部屋履き》のような風俗画作品が発展していくのです。

有名なフェルメールレンブラント
同じ17世紀オランダの画家ですね!

今回のルーヴル美術館展のサブタイトルは『愛を描く』です。
じつはこの《部屋履き》にも”愛”が描かれているといいます。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

この時代は”一般の人々の愛情”というものを大っぴらに描く事はありませんでした。
神話画などでは大胆な表現も許されましたが、実際の人間のそういった部分を官能的に表現することはできなかったのです。

そこで画家は直接的に愛を描く代わりに”暗示的”に、示唆するように愛を描いていったのです。
ではこの《部屋履き》の中にはどういった愛の”暗示”が描かれているのでしょうか?

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

まず画面中央に描かれている女性用の部屋履き
まるで脱ぎ捨てられたように、雑に置かれています。

けれどもこの情報だけでは、単にちょっと部屋履きを脱いだだけ、あるいはちょっと用事があって外に出ていっただけ、とも様々考えられます。

じつは絵の中の他のモチーフを読み解いていくことで、この脱ぎ捨てられた部屋履きがどういう意味を持つのか、分かる仕掛けになっているのです。

画中画について

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

やはり一番気になるのはこちらの画中画です。
ここには女性の後ろ姿が描かれていますが、じつはこの絵は実在する作品がベースになっています。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

それがこちらの作品。
アムステルダム国立美術館所蔵のヘラルト・テル・ボルフ(子)が描いた《雑な会話》という作品です。
この作品では娼婦の館でのやり取りが描かれています。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

そのような絵が画中画として描かれている点から、”不謹慎な恋愛”というニュアンスを読み取る事ができるのです。

つまりこの家の住人の女性(娼婦ではないでしょうけど)が、やるべき家事を放り出して、何か”よからぬ恋愛”をしていると想像することができるのです。

作品を読み解く様々なヒント

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

画面左側には箒(ほうき)があります。
箒には”魂の浄化”という意味がありますが、この絵では「そんなことは一旦脇に置いといて」ということでしょうか。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

次に鍵ですが、こちらは「しっかり鍵をかける」ということから”貞節”や”忠節”のシンボルといった意味もあります。

それがこのようにささったままで誰でも入れてしまう状況になっているのは、貞節や忠節がないがしろにされている、と見ることができます。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

部屋の構造としては、光の具合から右側に出入口があるように見えます。
そして肝心の部屋履きも右側を向いた状態で置かれているので、やはりここで靴を脱いで外へ行った…と考えられるのではないでしょうか。

(ここで部屋履きを脱いで、奥の部屋に行った。そしてそこにベッドあって…というパターンも考えられますが、、、)

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

以上の画中のモチーフを総合して考えると「女主人が家事を放り出して、男性の元へ行ってしまった」という風に読み解くことができるのです。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

この作品について番組解説の東京大学大学院の三浦篤さんは次のように話しています。

ダイレクトではなく色々なモチーフを散りばめて、それを読み解くことで楽しんで、いろんな状況を想像してもらおうという。そういう意図でも描かれている絵だと思いますね」(三浦氏)

つまり今紹介した読み解きもあくまで一例であり、見る人によって様々な考え方をすることができるのがこの絵の魅力なのです。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

また画面の奥から部屋を見るという構図は、”のぞき見をしている”感覚を生みます。
これにより鑑賞者は「秘密をのぞき込んでいる錯覚」を感じるのです。

一見するとただ室内が描かれているだけの作品に見えますが、描かれたモチーフを読み解いていくことで、そこに物語が浮かび上がってくる、そんな作品なのです。

今回の記事はここまでになります。

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