2020年6月7日にNHKで放送された「日曜美術館」の【蔵出し!日本絵画傑作15選 一の巻】の回をまとめました。
今回の記事はパート2になります。
前回のパート1はこちら☚からご覧いただけます。
番組内容に沿って、+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
国宝『源氏物語絵巻』
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
続いてご紹介するのは『源氏物語絵巻』です。
その名の通り「源氏物語」を題材にした絵巻物ですが、そのような絵巻物はじつは複数存在します。
今回は通称「隆能源氏(たかよしげんじ)」と呼ばれる、平安時代末期に作られ、国宝にも指定されているものを取り上げていきます。
この『源氏物語絵巻』は現存する最古の絵巻物で、また日本四大絵巻の一つに数えられています。
現在は一場面ずつ保存されており、名古屋市の徳川美術館と東京都の五島美術館に分かれて収められています。
高価な紙に高価な絵具や金箔・銀箔が使われており、豪華絢爛な絵巻物です。
そこに描かれているのは華やかな平安貴族の暮らしと恋愛模様です。
『源氏物語絵巻』は、ただその場面を描くのではなく画面の構成や構図などに巧みな仕掛けを施しています。
「柏木一」
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
最も完成度が高いと言われているのが、こちらの「柏木」の場面です。
主人公光源氏の妻である女三宮(おんなさんのみや)。
彼女は内大臣の息子である柏木と密かに通じ、彼の子を産みます。
その男児は薫と名付けられます。
女三宮は良心の呵責に耐えられず、泣きながら出家したいと申し出ます。
女三宮の傍で悲しみに暮れているのは女三宮の父の朱雀院(すざくいん)です。
そしてその横で光源氏が妻の裏切りに打ちひしがれています。
とんでもない修羅場ですね( ゚Д゚)
この修羅場の状況を表すための仕掛けが画面には隠されています。
それは「色遣い」です。
几帳(部屋の仕切り)や周りの女性たちには華やかな色が使われているのに対して、女三宮・朱雀院・光源氏の3人に衣装は墨や銀を使い暗い色で表わされています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
また室内に置かれた几帳と畳の線をあえて不揃いにすることで、複雑な3人の心情を際立たせています。
「柏木二」
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
ここでは、女三宮と関係を持った柏木が描かれています。
柏木の”禁断の恋”は、満開の桜が降りしきる中で桜模様の衣をまとった女三宮を見た事から始まりました。
柏木の寝所を覆う布には桜模様が施されており、二人の出会いが暗示されています。
彼はこの一件で激しく自分を責め、重い病になります。
そんな彼を親友の夕霧(ゆうぎり)が見舞っています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
『源氏物語絵巻』の全ての登場人物は「引目鉤鼻(ひきめかぎばな)」と呼ばれる描き方で表わされています。
表情が鮮明に描かれていないので、鑑賞者に内心の葛藤を想像させます。
柏木の目元は、よく見ると細かい線が重ねられており、瞳にもその神経が行き届いています。
「柏木三」
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
続いての「柏木三」で描かれているのは、薫の生後50日の祝いの場面です。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
不義の子を抱く、光源氏の表情。
シンプルな線で描かれていますが、その複雑な心中が伝わってきます。
そんなの祝えるか!って感じですけど。。。
また『源氏物語絵巻』は独特の上から俯瞰した構図で描かれています。
まるで神仏からの視線のように場面が描かれているのです。
今だとクレーンカメラを使って撮影するようなアングルですね。
建物を屋根を取り払い、上から覗き込んだようなこの構図は「吹抜屋台(ふきぬきやたい)」と呼ばれます。
普段見られない視点が、描かれている場面を非日常な空間へと変えるのです。
「吹抜屋台」だからこその見えてくるドラマがあるのです。
現存最古の絵巻物には、このように現代の私たちさえも魅了する細かな仕掛けに満ちていました。
国宝《伝源頼朝像》
武士が台頭し、公家とのぶつかり合いの中で新たな美意識が形成されていった鎌倉時代。
この時代を代表する肖像画の傑作です。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
誰もが一度は教科書で見た事ある《伝源頼朝像》。
国宝に指定されており、京都にある神護寺(じんごじ)が所蔵しています。
こうやって見ると結構大きいのですね(*_*)
天皇や僧侶ではない武士でありながら、これほど大きな肖像画が描かれるのは異例の事でした。
ほぼ等身大の大きさで表わすことで、目の前に人物が実際にいるかのような存在感が出ています。
引き締まった口元に、遠くを見つめる鋭い眼差し。
その顔立ちは威厳に満ちており、緻密に描かれています。
首から下の装飾は、まるで定規で描いたかのように直線的です。
黒一色のイメージが強いですが、じつは模様が入っており、この柄は「輪無唐草文(わなしからくさもん)」と呼ばれます。
そして裾先には銀色の蝶の柄が描かれています。
平緒(ひらお)と呼ばれる刀を身に着けるための組紐には、紺地に金を用いた鳳凰と桐の花の装飾が施されています。
目で見る事のできない威厳や気品が描きだされている、肖像画作品の傑作といえます。
今回の記事はここまでです。
続くパート3では、禅林寺(永観堂)所蔵の《山越阿弥陀図》についてまとめています。
こちら☚からご覧頂けます。
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