2020年5月9日にNHKにて放送された「地球ドラマチック」の【ルーブル美術館の舞台裏】の回をまとめました。
今回の記事はパート2になります。
前回のパート1はこちら☚からご覧いただけます。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
今回は学芸員のコーム氏、工芸品担当のカロル氏、庭園管理スタッフのイザベル氏の仕事から知られざるルーヴル美術館の裏側をご紹介していきます。
学芸員コーム氏の仕事
画像出展元:テレビ番組「地球ドラマチック」より
学芸員を務めるコーム氏はドラクロワの大展覧会の準備をしています。
この展覧会には世界中からおよそ200点のドラクロワ作品が集まる予定になっています。
(2017年放送当時)
画像出展元:テレビ番組「地球ドラマチック」より
フランス絵画の展示室でドラクロワの代表作である《アルジェの女たち》が取り外されています。
この日は美術館の休館日です。
スタッフは作品にぎりぎりまで近づき、絵の状態を確認します。
コーム氏はこの《アルジェの女たち》について、「近くで見れば見る程ほとんど官能的な喜びすら覚える。筆遣い、質感、色の組み合わせその全てにおいてドラクロワは達人だ」と感想を述べています。
画像出展元:テレビ番組「地球ドラマチック」より
この密着取材当時、ルーヴルとニューヨークで立て続けにドラクロワの回顧展の開催が予定されていました。
そのために壁から作品を取り外し、至近距離から状態をチェックしていたのです。
その確認作業にはわずかな傷も見逃さないために、紫外線ライトを使って行われます。
ルーヴルのドラクロワ展ではおよそ230点が展示される予定です。
その内40点はルーヴルが所蔵するものですが、190点は世界各地の美術館から集められます。
そしてその交渉もコーム氏の仕事なのです。
たいへん貴重な作品を数カ月から一年近く貸して欲しい、と大勢の人々を説得しなればいけない難しい仕事です。
作品を貸し出すという事は美術館にとって大きなリスクがあります。
一つには運搬する時などに、作品が損傷を受ける可能性がある事。
もう一つはその作品を目当てで来館した人が、作品がない事にがっかりしてしまう事です。
画像出展元:テレビ番組「地球ドラマチック」より
ルーヴル美術館から2キロほどの場所にあるサン・ポール=サン・ルイ教会。
ここにはドラクロワが1826年に描いた《オリーブ園のキリスト》があります。
この作品の貸し出しについての交渉もコーム氏が行い、展覧会への出展が決まりました。
画像出展元:テレビ番組「地球ドラマチック」より
この《オリーブ園のキリスト》は教会が画家に依頼したものです。
このように宗教的なテーマの絵を発注することは珍しい事ではありませんでした。
コーム氏は作品を間近で見て状態を確認します。
教会という場所は常にロウソクが燃やされているという事もあり、作品全体に真っ黒い煤(すす)がついていました。
展覧会前には作品本来の輝きを取り戻すために、数週間かけて修復が行われます。
サン・ポール=サン・ルイ教会との交渉は成功しましたが、交渉が難航する美術館もあります。
画像出展元:テレビ番組「地球ドラマチック」より
次にコーム氏が向かったのはフランス南西部にあるボルドー美術館です。
ボルドーはドラクロワが幼年期を過ごした場所です。
いわばドラクロワと所縁のあるボルドー美術館ですので、当然ドラクロワの作品は美術館にとって大切なものです。
交渉の対象の作品は、《ライオン狩り》と《ミソロンギの廃墟に立つギリシア》の2点。
この2点の作品はボルドー美術館にとっての『モナ・リザ』だといいます。
画像出展元:テレビ番組「地球ドラマチック」より
特に《ライオン狩り》はかつて火事で失われかけた事がありました。
絵の上の部分には焼けた跡が今も残っています。
そのため「移動や展示の際には細心の注意を払って欲しい」というのがボルドー美術館からの要望でした。
交渉の結果、無事展覧会への貸し出しが決まりました。
その後も多くの美術館との交渉は続き、結果180作品の貸し出しの承諾を得ました。
史上最大ともいえる「ドラクロワ回顧展」が開かれます。
一方でおよそ10点の作品は断られたといいます。
その理由は、所蔵する美術館がリニューアルしたばかりだという理由や、あまりにも損傷しやすい状態だから等、様々だといいます。
しかし作品が届いて箱を開けるときは”魔法のようなひととき”だとコーム氏は言います。
工芸品担当のカロル氏の仕事
画像出展元:テレビ番組「地球ドラマチック」より
ナポレオン3世の時代のシャンデリア。
重さ1トンもある世界最大級のシャンデリア取り外し、クリーニングを指揮するのが、カロル氏に任された仕事です。
その手順はまず部屋全体を大掃除し、ほこりをすべて取り除きます。
画像出展元:テレビ番組「地球ドラマチック」より
「ナポレオン3世の居室」は19世紀半ばの第二帝政時代にナポレオン3世が実際に使用していた部屋です。
本格的なクリーニングが行われるのは23年ぶりの事です。
これはカロル氏にとってルーヴルで勤務して以来、一番の大仕事だといいます。
ルーヴル美術館の工芸品には中世のビザンティン帝国時代のものから19世紀のものまであります。
そしてその一つ一つに物語があるのです。
ルーヴル美術館で働くスタッフの勤めは、全ての品をできるだけよい状態で次の世代の受け渡す事だとカロル氏は言います。
庭園管理スタッフのイザベル氏の仕事
画像出展元:テレビ番組「地球ドラマチック」より
ルーヴル美術館の隣にあるチュイルリー庭園。
ここもルーヴル美術館が管理・維持をしています。
16世紀に庭園になる前は瓦工場だったといいます。
この”チュイルリー”という名称も、瓦のフランス語である”tuile(チュイール)”に由来しています。
ルーヴル美術館の方を見ると、美術館の建物とピラミッド。
そして見上げたすぐ上にはカルーゼル凱旋門。
反対側を見ると、優美な景観の向こうにはシャンゼリゼ通りの凱旋門まで見渡せます。
広さは25ヘクタールを誇るフランス式の庭園です。
毎年1400万人がこの庭園を訪れます。
(ルーヴルの年間入場者数は900万人)
画像出展元:テレビ番組「地球ドラマチック」より
そこで働くイザベル氏は池の改修に取り組んでいます。
庭園の池には3体の彫像がありますが、伸びきった葦の茂みのせいで見えにくくなっていました。
茂みを取り払い、周りから彫像が良く見えるようにするといいます。
自然環境を維持する事も大切な仕事なのです。
画像出展元:テレビ番組「地球ドラマチック」より
改修工事中には茂みの中にある水鳥の卵が孵化し、ひなが生まれていました。
「こういった時には自然が人間に取るべき道を示します。
その際に当初の計画と多少異なっても問題なく、庭園にいる鳥を守ることも重要な仕事です」とイザベル氏は言っています。
画像出展元:テレビ番組「地球ドラマチック」より
池の改修は無事に完了し、彫像もかつての輝きを取り戻しています。
今回の記事は以上になります。
最後までご覧頂きありがとうございました。
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