2018年4月8日にNHKで放送された「日曜美術館」の【見えないものを見る〜オディロン・ルドンのまなざし】の回をまとめました。
今回の記事はパート2になります。
前回のパート1はこちら☚からご覧いただけます。
番組内容に沿って、+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
ルドンの描くモノクロの世界
パリに印象派が台頭し、鮮やかな色彩の作品が登場した頃、ルドンは色彩を用いない黒一色の画面の作品を描いていきます。
ルドンは自身の作品について以下のような言葉を残しています。
「黒は最も本質的な色彩である。
それはパレットやプリズムの美しい色彩よりも、はるかに優れた精神の代理人なのである」
色を使えば目に見えるものは表現する事ができます。
しかし、目に見えないものを表現するための手段としてルドンは黒にこだわったのです。
《預言者》1885年頃
オディロン・ルドン
シカゴ美術館蔵
この作品は45歳半ば頃、故郷のペイルルバードで描いたとされる作品です。
そこにはルドン独特のモノクロの世界が広がります。
描かれている人物は何者で、何を見つめているのか。
全てが謎めいた作品です。
《植物人間》1880年頃
オディロン・ルドン
シカゴ美術館蔵
こちらは「植物人間」と題された作品です。
顔の周りには、光なのか植物の綿毛なのか分からない何かが描かれています。
画面左上には大気をさまよう謎の物質も見えます。
ルドンに対する評価
モノクロの世界の中で「目に見えないもの存在」を描こうとしたルドンですが、彼の作品はごく一部の人にしか評価されませんでした。
それも「恐怖を描いたオカルト的な画家」というある種カルト的な人気であり、それはルドンの望む評価ではありませんでした。
「私は降霊術師などではない。私はただ芸術を作り出しているだけなのだ」
ルドンは自分の芸術について書かれた記事に対して、このような反論の言葉を残しています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
1883年、ルドン43歳の時に『起源』と題された石版画集を刊行します。
この表紙は当時議論を呼んでいた「ダーウィンの進化論」を意識したものだと考えられています。
またルドンは目をモチーフにした作品を多く残していますが、この目は自然や生命のイメージとして多用されました。
《肘かけ椅子の上のひまわりのある静物》1901年
ポール・ゴーギャン
エルミタージュ美術館蔵
こちらはポスト印象派の旗手、ポール・ゴーギャンの描いた作品です。
ゴーギャンはルドンの芸術に深い理解を示しました。
「ルドンの芸術は、本質的には人間的であり、我々と共に生きているものである。
それらは決して怪物などではない」
と述べています。
この《肘かけ椅子の上のひまわり》では、おそらくはルドンから影響を受けたであろうと思われる”一つ目”がひまわりが描かれています。
印象派へのまなざし
ルドンは印象派の代表的な画家、クロード・モネと同じ年の生まれです。
ですので印象派の存在をすごく意識していたと考えられます。
印象派が持っていた「光で捉えて分析していこう」という考え方自体を、ルドンも持っていたと考えられます。
しかしルドンが着目したのは、そういった印象派の画家たちが”取りこぼしていったもの”でした。
”取りこぼしていったもの”とは、明るさの逆にある「暗い影」であり「闇」だったのです。
しかしそれは「アンチ印象派」という構えのものではなく、逆のものとしてぶつかり合うための相手だったのです。
色彩との出会い
黒を使って独自の作品世界を表現してきたルドンですが、40代の終わりから色彩を使うようになったのです。
《眼をとじて》1890年
オディロン・ルドン
オルセー美術館蔵
この《眼をとじて》という作品は、その転換期に描かれたものです。
この作品は1000フランでフランス国家に買い上げられています。
ルドンのシンボルとも言える眼は、この作品では閉じられています。
ルドンは色彩を手にした喜びについて、「私は色彩と結婚した。もうそれなしで過ごすことはできない」と述べています。
こうして彼の作品はどんどん色鮮やかなものへと進化していきます。
《神秘的な対話》1896年頃
オディロン・ルドン
岐阜県美術館蔵
《ドムシー男爵の城館の食堂壁画》
色彩を手に入れたルドンが60歳の時に挑んだ大作が、『ドムシー男爵の城館の食堂壁画』です。
フランスの貴族の館の食堂を覆った全16点から構成される装飾画です。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
オルセー美術館所蔵の全15枚が、2018年の展覧会「ルドンー秘密の花園」では来日、一堂に会しました。
私も見に行きましたが、これは圧倒される迫力がありました。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
こちらはその食堂壁画の配置図です。
ドアや窓を除く壁面にびっちりと彼の作品が飾られていたのが分かります。
ルドンはこの連作を一年半の歳月をかけて完成させました。
そこには溢れる光と色彩、その中に花とも生き物ともつかない不思議な物体が舞い踊っています。
《グラン・ブーケ(大きな花束)》
《グラン・ブーケ(大きな花束)》1901年
オディロン・ルドン
三菱一号館美術館蔵
この連作のなかでも「最高傑作」の呼び声が高いのがこちらの作品です。
パステルによって描かれた高さ約2.5メートルの巨大な画面。
柔らかい色彩の花々が咲き誇ります。
花の中には現実には存在しない、不思議な形や色をしたものが見られます。
「見えないものを描く」この信念を貫き通した画家、オディロン・ルドン。
晩年は個展が開催されたり、サロン・ドートンヌではルドンに一室が捧げられたりなど高い評価を確立しました。
そして1916年、76歳でその生涯を閉じるのです。
今回の記事は以上になります。
最後までご覧頂きありがとうございました。
コメント
[…] 今回のパート1はここまでです。 つづくパート2ではルドンのモノクロの作品世界、そうしてそこからどのようにして鮮やかな色彩の作品になったのかを見ていきます。 こちら☚からご覧いただけます。 […]