【フェルメール】『手紙を書く婦人と召使い』②【美の巨人たち】

美の巨人たち

2018年12月8日にテレビ東京にて放送された「美の巨人たち」の【フェルメール『手紙を書く婦人と召使い』手紙をめぐるミステリー】の回をまとめました。

今回の記事はパート2になります。
前回のパート1はこちら☚からご覧ください。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。

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芝居をつくるように描いて

画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より

フェルメールは裕福だった妻カトリーナの実家に同居しながら、作品を制作していました。
一説には建物の2階の一室をアトリエとして使っていたといいます。

そしてその空間をフルに活用したのです。
まるで一つの舞台上に色々な場面を再現するかのように。


フェルメールの作品には、何度も登場するアイテムがいくつかあります。
その一つが《手紙を書く婦人と召使い》でも描かれているこちらのテーブルクロス
似たようなものが他の作品でも登場します。

フェルメール 《取り持ち女》部分

フェルメール《眠る女》部分

深みのある赤色にオリエンタルな柄があしらわれたもので、この他にも《窓辺で手紙を読む女》や《ワイングラス》、《音楽の稽古》などにも描かれています。

こちらはペルシャ絨毯だとされており、オランダでは高価なもので、テーブルクロスやタペストリーとして使われていました。


また覗き見るような効果を生んでいる緑色のカーテン。
こちらも他の絵に登場しています。

フェルメール《窓辺で手紙を読む女》

この作品では《手紙を書く婦人と召使い》とは反対側、右側に使われています。

フェルメール《ワイングラス》部分

こちらの作品では、男性のマントとして使われています。

画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より

このようにフェルメールの作品には同じ小道具が何度も使われているのです。
今まで挙げたもの以外にも、壺や椅子、ステンドグラスや女性が着ている黄色いガウンなどがあります。

アムステルダム国立美術館学芸員のピーター・ルロフス氏は、「これらはフェルメールの家やアトリエにあったものではないか」と言います。

17世紀の絵画では、絵の中に登場するモチーフに深遠な意味があったのです。
何気ない日常の一場面を描いていても、そこに別の意味が込められたりしていたのです。

画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より

フェルメールはアトリエという限られた空間を使って作品の舞台を作りました。

画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より

家具や小道具を巧みに使い分け、

画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より

綿密に構成を計算しながら、

画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より

まるでそこに一幕ものの演劇の舞台をつくるかのように。

画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より

フェルメールにとってアトリエは、まさに劇場のような場所だったのかもしれません。
彼はここで構成を考え、美術を制作し、モデル配置して演技をつけるように描いたのです。

壁にかかった絵の秘密

手紙を書く婦人と召使い》。
この作品の背後の壁には絵が飾られています。

この絵についてフェルメール研究家のケース・カルデンバッハ氏は次のように語ります。
(この画中画は)『モーセの発見』という旧約聖書にあるテーマを描いたもの。画商でもあったフェルメールの商売用のコレクションだったと思われます


ここに描かれているのは旧約聖書の『出エジプト記』の「モーセの発見」の一場面です。

エジプト王は「ヘブライ人の男の子が生まれた場合殺害せよ」という命令を出します。
モーセの母であるヨケベドは隠し育ててきた我が子の身の危険を案じ、カゴに乗せて川に流しました。

画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より

そしてモーセはその川の下流で水浴をしていた王女達に幸運にも助けられ、王族として育てられることになるのです。
そして母のヨケベドは密かに乳母となり我が子を育てるのです。


子供のために尽くす、深い母の愛情が感じられるエピソードです。
しかしフェルメールがこの絵の前に描いたのは、恋に夢中になり、ペンを走らせる女性です。

フェルメールは何を表現しようとしたのでしょうか?

謎多き画家フェルメール

画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より

フェルメールと妻のカタリーナの間には、子どもが11人いたといわれています。
賑やかな家庭であった事が想像されますが、フェルメールの作品に子供の姿はありません

彼の作品はどれも静寂と、何か心をざわつかせるものがあります。

もしかするとこの女性は既婚者で、夫の居ぬ間に別の男性との恋に夢中で、我が子の事も眼中にないのかもしれません。
そう考えると背後の『出エジプト記』の絵は、そんな女性を皮肉っているように見えます。

絵画とは見方を変えることで、様々な解釈をすることができるものです。

フェルメールは私たちの想像力を刺激します。この絵も家族や恋愛、または失恋など30以上のストーリーが考えられます。言い換えればフェルメールは私たちに想像する場を与えてくれているのです」(フェルメール研究家、ケース・カルデンバッハ氏)

登場人物の立ち振る舞いや視線、そして散りばめられた小道具。
その一つ一つを読み解きながら、見る者は画家が作り出した世界を自由に味わうことができるのです。

ペンを走らせる音だけが響く室内。
手紙をしたためる女性を描いたフェルメールは、何を表現したかったのか。

絵を味わい、絵を読み、想像する喜びに満ちた彼の作品は、時代も国も超えて多くの人を魅了しているのです。

今回の記事はここまでになります

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

コメント

  1. […] では一体何が描かれているのか… 続きはパート2の記事にて。 【フェルメール】『手紙を書く婦人と召使い』②【美の巨人たち】 […]

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