2021年5月9日にNHKで放送された「日曜美術館」の【孤高の花鳥画家 渡辺省亭】の回をまとめました。
番組内容に沿って、+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
イントロダクション:日本画家 渡辺省亭
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
今回取り上げるのは、明治から大正にかけて活躍した日本画家、渡辺省亭(わたなべ せいてい)です。
2020年には初めての回顧展が開かれるなど、近年大きな注目を集めています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
渡辺省亭は花や鳥を主題に描く「花鳥画」で数々の傑作を残しました。
彼の描く鳥は極めて正確で、現代の鳥類学者も舌を巻くほどだといいます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
迎賓館赤坂離宮の七宝にも、省亭の花や鳥を見る事ができます。
また省亭は日本画家として初めてパリに渡った人物でもありました。
こちらの作品は、あの有名な印象派の画家に送られたもので、その画家は生涯この絵を大切に持っていたといいます。
省亭は後年画壇に属さず、また弟子も取らず、市井の画家として生きました。
それにより、これだけ偉大な業績を残しながらも、次第に忘れ去られる存在となっていきます。
《牡丹に蝶の図》
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
こちらの作品は、展覧会『渡辺省亭-欧米を魅了した花鳥画-』のメインビジュアルにもなっている作品です。
十分な余白を取った画面、その下半分に淡い桃色と白の大輪の牡丹が描かれています。
白の牡丹にはクロアゲハがとまっており、鮮やかなコントラストを生んでいます。
花弁には絶妙なグラデーションが施され、西洋の水彩画のようです。
画面左には枯れた牡丹も描かれています。
抜け落ちたおしべは、ゆっくりと落下していくようです。
少し右側に流れていく事で、ここに風が吹いているのを感じさせます。
省亭の洗練された画面と卓越した描写力が分かる一枚です。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
美術史家の山下裕二先生は、長年省亭について研究してきました。
省亭は江戸時代以来の日本の絵画の描法、それを身につけた上で、最初にヨーロッパに渡りました。
西洋の絵画に直に触れた省亭は、自分の画風に洋画的な表現を加えて、唯一無二の存在となりました。
「この時代の最高レベルの画技を持ってると思いますよ」(山下氏)
《春野鳩之図》
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
こちらは春の野辺を描いた作品。
わずかに散り始めた桜の下に、3羽の鳩が集まっています。
地面には、つくしやわらび、タンポポといった、春の草花が見えます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
鳩は羽の色や体の向きを変えて描き分けられています。
柔らかな羽毛や鳩の表情を、細かな筆を重ねることで表現しています。
これぞ省亭の写実なのです。
省亭の生い立ち
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
省亭は幕末の1852年、江戸の神田佐久間町に生まれます。
生粋の江戸っ子でした。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
本姓は吉川といい、実家は札差(ふださし)で現在の金融業でした。
家のすぐ近くには「飼鳥屋敷」があるのが分かります。
ここでは将軍の鷹のエサとして、スズメや鳩が飼育されていました。
幼い頃から鳥を身近に見て育ったのです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
「5~6歳の頃は絵を描くのが何より楽しかった」と省亭本人は残しています。
省亭は奉公先からお金が入ると、すぐに絵草子屋(えぞうしや)に向かい、北斎や広重の浮世絵を買って、ひたすら模写をしたといいます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
そして16歳の時に日本画家の菊池容斎(きくち ようさい)に入門します。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
菊池容斎は歴史人物画を得意とした絵師でした。
省亭は容斎の元で、入門してから3年間、来る日も来る日も書道ばかりやらされたといいます。
「しかし、それが結果としてよっぱりすごく良かった。それによって筆を完璧にコントロールできる技術を身につけている」と美術史家の山下先生は言います。
省亭の作品には容斎門下時代に学んだ”書の素養”が生きているのです。
容斎から学んだもう一つの教えが「自然を良く観察し、記憶し、写生せよ」というものでした。
この教えも省亭の写生の精神を育むこととなりました。
省亭は自らの修業時代について次のようにに振り返っています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
こうして省亭は腕を磨き、30代で自らの画風を確立しました。
今回の記事はここまでになります。
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