2020年7月7日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#351 ぶらぶらプロデュース!夢の特別展③~死ぬまでに見たい日本絵画10選!山下裕二x仏画の最高峰から琳派、若冲、隠し玉まで~】の回をまとめました。
今回の記事はパート5になります。
前回のパート4はこちら☚からご覧いただけます。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
《一葉女史の墓》鏑木清方
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
近代日本画の巨匠、鏑木清方(かぶらききよかた、1878-1972)の作品です。
作品の読み方は「いちようじょしのはか」。
この作品は鎌倉市にある鏑木清方記念美術館が所蔵しています。
画像出展元:wikipedia「鏑木清方」より
鏑木清方は非常に江戸らしい画家でした。
生まれは東京の神田で、13歳の時に浮世絵師の系譜にある水野年方(みずの としかた)に弟子入りします。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
その水野年方の師匠は月岡芳年で、さらにそのまた師匠はなんと歌川国芳まで遡ります。
弟子は師匠から一文字ずつ貰い、受け継がれてきたのです。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
鏑木清方は20代の頃、挿絵画家として活躍します。
明治の小説などをみると、清方の挿絵がやたら多いといいます
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
この《一葉女史の墓》も20代半ばの頃の作品です。
タイトルにもある通り、明治時代に活躍した小説家の樋口一葉のお墓が描かれています。
今の五千円札に載っている人ですね!
お墓にもたれかかっている女性は樋口一葉が描いた小説『たけくらべ』の主人公の美登利(みどり)です。
この作品は小説の主人公が、作者のお墓に詣でているという、ある種のファンタジーのような作品なのです。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
線香の立ち上る煙一つとっても、品のある優美さが表現されています。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
美登利が持つ水仙の花はじつは造花です。
この水仙の造花というのが、小説『たけくらべ』のラストシーンで非常に重要なモチーフになっているのです。
清方は文芸雑誌『文藝倶樂部』に「たけくらべ」が一括掲載された際に作品を読み、深い感銘を受けて以降、樋口一葉をリスペクトして作品を愛読するようになります。
この《一葉女史の墓》には、清方の樋口一葉に対する敬意が表されているのです。
後年、清方は自らの画業を回想して、この作品を「生涯の制作の水上にある」と述べています。
この作品の中に自分の全てがあると言い、終生手放すことはなかったといいます。
ですので今でも清方の旧居跡に建てられた鏑木清方記念美術館が所蔵しているのです。
《青柳》小村雪岱
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
「死ぬまでに見たい日本絵画10選!」
最後の10作品目は山下先生曰く「隠し玉の作品」とのこと。
埼玉県立近代美術館が所蔵する小村雪岱(こむらせったい)の《青柳(あおやぎ)》です。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
小村雪岱は明治の生まれで、大正・昭和初期と活躍した日本画家です。
画家以外にも、版画家・挿絵画家・装幀家などの仕事も手掛けました。
小村雪岱は”日本のアートディレクター、グラフィックデザインの元祖”と言われています。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
そんな雪岱の手掛けたものの一つが「資生堂書体」です。
「資生堂書体」とは資生堂の商品デザインや、ポスター・テレビCMなどで使われている自体です。
「現在活躍中のグラフィックデザイナーで小村雪岱のファンだという人は結構いる」と山下先生は言います。
画像出展元:wikipedia「小村雪岱」より
小村雪岱は東京美術学校で日本画を学びます。
また在学中に出会った小説家の泉鏡花(いずみ きょうか)から「雪岱」の雅号を与えられます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
先に取り上げた《一葉女史の墓》を描いた鏑木清方と同時代の画家で、またライバルのような関係でした。
しかし雪岱は54歳の若さで先に亡くなってしまいます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
この《青柳》で描かれているのは日本家屋の光景です。
青畳の上に二つの鼓と三味線が置かれている、ただそれだけです。
何か音楽の稽古の前なのか、その後なのかはここからは分かりません。
人物は描かれていませんが、人の気配を感じさせる作品です。
このような作品は「留守模様(るすもよう)」と呼ばれます。
人物はいませんが、いない人物を暗示させるモチーフを描いているのです。
今でいうデザイナー的な仕事を数多く手がけた雪岱は、日本画の本画はあまり残してはいません。
この《青柳》という作品は数少ない本画の作品で、埼玉県立美術館に収蔵されています。
(版画のものもあります)
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
画面構成や色遣いも見事です。
縁側や屋根瓦の直線に対して、しなる柳の曲線の対比。
緑色が全体に配されていますが、その中に少しだけ赤色(矢印の所)を入れるそのセンス。
雪岱が亡くなったのは昭和15年の事ですが、その翌年から日本は太平洋戦争へと突入していきます。
昭和10年代に亡くなった芸術家は、戦時下という事もあり、その後忘れ去られる事が多いといいます。
山下先生にとっては、若冲然り、雪岱のように忘れられていった画家にスポットライトを当てるのも大事な使命だといいます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
2020年10月からは山下先生が監修した小村雪岱の展覧会が山口県立美術館で開催されます。
その後2021年の2月から東京の三井記念美術館に巡回します。
これは要チェックですね!
今回の「死ぬまでに見たい日本絵画10選!」のまとめ記事は以上になります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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