【新美の巨人たち】バンクシー《Game Changer》②【まとめ】

新美の巨人たち

2020年7月18日にテレビ東京にて放送された「新美の巨人たち」の【「今こそアートのチカラを」⑩ バンクシー「Game Changer」】の回をまとめました。
こちらの記事はパート2になります。
前回のパート1はこちら☚からご覧頂けます。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪

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《Game Changer》2020年

今年2020年5月6日、バンクシーの新作が突如発表されました。

ロンドンから車で2時間ほどの所にあるサウサンプトン総合病院
都市封鎖が続いていたイギリスで、新型コロナウイルスと戦う最前線の医療施設であり、コロナの新薬の臨床試験もここで行われました。

Game Changer》はバンクシー自らこの病院に寄贈し、作品は現在廊下に飾られています。
彼の作品にしては珍しく額装されたキャンバスにデッサンのようなタッチで描かれています。

描かれているのはジーンズのオーバーオールを来た男の子。
その手にはナース姿の人形が掲げられ、ヒーローのようにマントがはためいています。

Game Changer」とは世界の流れを変える人を指す言葉です。

画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より

この作品は最前線で働く医療従事者の励みになっている事でしょう。

しかしバンクシーがこの作品に込めたのは、”医療従事者の方々を称えるメッセージ”だけなのでしょうか?


男の子の傍らに置かれたカゴの中に無造作に置かれたヒーローの人形。
足も折れ曲がっており、一見捨てられているようにも見えるこれらは何を意味するのでしょうか。

バンクシーの生い立ち

イギリス南西部にある港町、ブリストル
バンクシーはこの街で生まれたと言われています。
生年月日は非公開ですが、一説によると1973年7月28日生まれと言われています。
(1974年、1975年という説もあるそうです)

中学時代にとある事故の濡れ衣を着せられて退学処分となったバンクシーは、14歳でグラフィティ活動をスタートさせます。

ブリストルの街にはバンクシーの初期の作品が今も残されています。
この街の人々にとって、バンクシーのグラフィティは単なる落書きではありません
街の特徴の一つ、そして人々のディベートの場にもなっているのです。

そんな彼の故郷の街ではバンクシーの作品を保護し続けています。
街に残る作品のいくつかをご紹介します。

《Mild Mild West》1999年

画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より

バンクシーがフリーハンドで20代の時に描いたと言われる作品です。
一見するとかわいいクマに見えますが、手には火炎瓶を持ち、警官隊と思しき人たちに投げつけようとしています。

この当時行われた無許可のレイブパーティー(ダンス音楽を一晩中流す大規模な音楽イベントやパーティー)が警察の弾圧を受けたことを風刺する作品といわれています。

《Well-Hung Lover》2006年

画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より

こちらは性病クリニックがあった建物の壁に描かれたグラフィティです。
妻の浮気現場に乗り込んだ夫とその妻、間一髪窓の外に逃れる浮気相手が描かれています。

この作品については保存するか否かでブリストルの街で議論が起こり、市民の大多数(97%)が保存に賛成し残されました。

《Girl with a Pierced Eardrum》2014年

画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より

こちらのグラフィティはフェルメールの名画《真珠の耳飾りの少女》のパロディー作品です。
少女の象徴的な耳飾りが、建物の警報器になっています。

現在は今回のコロナウイルスの感染拡大を受けて、絵にもマスクが付けられていますが、元々はありませんでした。

バンクシーのこれらグラフィティ作品の制作活動は人々が寝静まった深夜に行われます。

画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より

描きたい形に切り抜いた厚紙を使って、型紙を作ります。

画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より

その型紙を壁に貼り付けて、スプレー缶を使って描いていきます。
細かな調整や文字はフリーハンドで描きます。

無断で建物の壁に描くことはもちろん犯罪行為、器物損壊にあたります。
バンクシーの作品はアートなのでしょうか?それとも犯罪なのでしょうか?

『見る革命』

バンクシーのようなストリートアートの起源は1980年代のアメリカ・ニューヨークと言われます。

美術の世界では、それ以前の70年代頃まで白人の男性が主にアートを作り、またアートを評価していました。
80年代に入るとそれが飽和状態になり、白人の男性だけでなく、黒人やトランスジェンダーの人がアートの世界に現れ、多様性が見られました。

画像出展元:wikipedia「Keith Haring」より

ストリートアートの先駆者的存在でもある画家のキース・へリング(1958-1990)。
彼は同性愛者である事を公言して、生命力をテーマに作品を発表します。

画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より

ジャン・ミシェル・バスキア(1960-1988)の作品の根源的な題材は”人種差別”でした。

銃の変わりにスプレー缶を持って表現する子供が増えた」と言われるように、ストリートアートはポジティブなエネルギーの表現だったのです。
「犯罪だから良くない」「街に勝手に描いているから良くない」という事よりも、作品に込められたエネルギーによって彼らのアートは発見されたのです。

画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より

バンクシーも故郷を飛び出し、世界中で力強いメッセージを込めた作品を発表しています。
こちらの『Wrong War』と書かれた反戦デモのプラカード。
2003年にロンドンで行われたイラク戦争反対のデモの際にバンクシーが配布、デモの参加者は彼のグラフィティが描かれたプラカードで反戦を訴えました。

今回の記事はここまでです。
続くパート3では、そんなバンクシーの名を世界中に知らしめた2005年のパレスチナ・ベツレヘムでの出来事と作品をまとめていきます。
こちら☚からご覧頂けます。

コメント

  1. […] 今回の記事は以上になります。 続くパート2ではバンクシーの新作で、イギリスの病院に寄贈された《Game Changer》についてまとめていきます。 こちら☚からご覧頂けます。 […]

  2. […] 2020年7月18日にテレビ東京にて放送された「新美の巨人たち」の【「今こそアートのチカラを」⑩ バンクシー「Game Changer」】の回をまとめました。 こちらの記事はパート3になります。 前回のパート2はこちら☚からご覧頂けます。 […]

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