2020年7月12日にNHKで放送された「日曜美術館」の【蔵出し!西洋絵画傑作15選(2)】の回をまとめました。
今回の記事は前週分からの続きでパート4になります。
前回のパート3はこちら☚からご覧頂けます。
番組内容に沿って、+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
今回の2週目は、15世紀のヒエロニムス・ボスから始まり19世紀のフランシスコ・デ・ゴヤまでの5作品でした。
《快楽の園》ヒエロニムス・ボス
《快楽の園》1503-04年
ヒエロニムス・ボス
プラド美術館蔵
「蔵出し!傑作選」の西洋絵画6作目は、ヒエロニムス・ボスの《快楽の園》です。
三連祭壇画と呼ばれる形式のこの作品。
閉じた状態では、上の画像のようにモノクロームで描かれた天地創造の世界が描かれています。
《快楽の園》はルネサンスと同時代に描かれた作品ですが、美術史上”分類が困難な一枚”と言われています。
左側に描かれているのは「エデンの園」と言われており、神がアダムとイヴを引き合わせています。
中央に描かれているのはおびただしい数の裸の男女です。
彼らは不思議な形の生き物や植物と戯れています。
そして右側に描かれているのは「闇の世界」です。
ここでは人々が様々な形で拷問を受けています。
画面全体が複雑な寓意で溢れているのです。
画家ヒエロニムス・ボス
この謎に満ちた作品を描いたヒエロニムス・ボス(Hieronymus Bosch、1450年頃-1516)も謎に満ちた人物です。
街のキリスト教団体「聖母マリア兄弟会」にも所属する敬虔なキリスト教徒で、相当な知識人であったとされます。
楳図かずお氏の考察
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
2003年の日曜美術館の放送で、漫画家の楳図かずおさんがこの作品について語っています。
『アダムとイヴから始まった人類がこんなにも増えてしまった。
その増えてしまった人々が集まるという事自体に意味がある。
集まる事によって何かが起きる、良い事も悪い事も。
堕落の始まりが集まりという事もあるのかなとちょっと思う』
また作品からは音楽が聞こえてくるようで、描かれている一人一人が音楽の中の音符、オタマジャクシのようにも見えると言います。
一人が特に主張しているのではなく、全体の中の一部になっているのです。
《快楽の園》に描かれているもの⑴
貝の中から脚だけが出ています。
これは「性愛」を表しているといいます。
こちらでは巨大な甘いイチゴに群がる人々の姿が。
傷みやすい果実は快楽の象徴です。
こちらでは耳からナイフが出ています。
耳の下敷きにされている人の大きさから考えると、かなりの大きさの耳のようです。
神の言葉に耳を傾けない人の行く末を暗示しているようです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
楽器に押しつぶされて下半身だけが見えている人。
そのお尻にはなぜか楽譜が書かれています。
これを実際に演奏すると、どこか不気味な音色になります。
この旋律は「音楽に潜む悪魔」とも呼ばれ、中世の教会では使用が禁じられていたといいます
天上の楽器として描かれる事の多いハープやリュートなども、ここでは拷問の道具として描かれています。
愚者の祭り
14世紀、ヨーロッパ中を恐怖の渦に陥れたペスト。
その流行は神の怒りの表れだとして、15世紀の終わりには「世界の終末」が信じられていました。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
今に伝わる「愚者の祭り」。
この祭りでは、現世に絶望した人々が魔物に扮して、教会や権威への批判をそこに忍ばせたといいます。
ボスはこの《快楽の園》で「誰もが皆、愚者である」という事を表現したかったのかもしれません。
こちら見つめる男の顔はボス自身の自画像だと言われています。
ボスはその目でどんな世界を見つめていたのでしょう。
写真家 藤原新也氏の考察
1982年の日曜美術館に出演した写真家の藤原新也氏は《快楽の園》について次のように語っています。
「ボスが描いた地獄風景や悦楽の風景は、必ずしも想像の世界ではなく、現実をデフォルメしたものなのではないか。
(自分自身)写真家として地球上の国々を回っているが、天国や地獄というのは今生きているこの世界に存在すると感じるわけです。
ボスは必ずしも空想したわけではなく、写実したということなのではないか」
《快楽の園》に描かれているもの⑵
中央のパネルに描かれているこのフクロウは、「異教」あるいは「知恵の女神」、さらには「悪」のモチーフとされており、この《快楽の園》では色々な所に描かれています。
こちらの一見おかしなポーズをしている人。
右側の「闇の世界」に登場するこの男性、じつはスケートを滑っているのです。
地獄というと、「燃えたぎるような熱いところ」を想像しますが、ここでは”氷の地獄”が表現されているのです。
その氷が割れて落ちてしまっている人も描かれています。
こちらは左側の「エデンの園」に描かれている読書をする謎の生き物です。
下半身は魚のようですが、上半身は鳥のようで、さらに人間のような腕が伸びています。
まったく不思議な生き物です。
今も謎に満ちた《快楽の園》。
人間の醜さだったり愚かさだったり、そういった人の全てがさらけ出された真実の世界が描かれているのかもしれません。
今回の記事は以上になります。
続くパート5ではカラヴァッジョの《聖マタイの召命》についてまとめていきます。
*現在記事作成中です。
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