【日曜美術館】やまと絵展①【美術番組まとめ】

日曜美術館

2023年11月12日にNHKにて放送された「日曜美術館」の【まなざしのヒント 特別展やまと絵】の回をまとめました。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。

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特別展『やまと絵 -受け継がれる王朝の美-』

東京国立博物館平成館で2023年10月11日から12月3日まで開催されている特別展『やまと絵 -受け継がれる王朝の美-』。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

やまと絵は”日本美術の王道”と呼ばれます。
しかし、やまと絵と聞いてパッとそのイメージを浮かべることができる人はそう多くはないのでしょうか。

今回の記事ではやまと絵展の出展作品を見ながら、やまと絵を楽しく鑑賞するヒントについてまとめていきます。

やまと絵とは?

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

やまと絵」というのは、平安時代初期に作られ始めた絵画様式のことを指します。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

やまと絵ができる以前は中国・唐の絵画に倣い、中国の風景や人物を描いていました。
このような絵画を「唐絵(からえ)」と呼びます。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

その唐絵からもう少し日本の風景や人物を描いていこう」と変化したのが”やまと絵”になるのです。
そこから1000年続いていくやまと絵ですが、中国絵画の影響を受け、時代時代で変化をしながら発展していくのです。

四大絵巻

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

やまと絵には「四大絵巻」と呼ばれるものがあります。

  • 源氏物語絵巻(げんじものがたりえまき)
  • 信貴山縁起絵巻(しぎさんえんぎえまき)
  • 伴大納言絵巻(ばんだいなごんえまき)
  • 鳥獣戯画(ちょうじゅうぎが)

いずれも平安時代末期につくられた絵巻の傑作で、現在は国宝に指定されています。

その中から《信貴山縁起絵巻》についてまとめていきます。

《信貴山縁起絵巻》

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

国宝『信貴山縁起絵巻 飛倉巻(とびくらのまき)』です。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

信貴山縁起絵巻は以下の3巻から成り立っています。

  • 飛倉巻
  • 延喜加持巻(えんぎかじのまき)
  • 尼公巻(あまぎみのまき)

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

この『信貴山縁起絵巻』で描かれているのは、現在も奈良県にある信貴山朝護孫子寺(ちょうごそんしじ)の開祖である命蓮(みょうれん)の物語です。

飛倉巻では法力を自在に操ったと伝わる命蓮の奇想天外なストーリーが描かれます。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

命蓮は信貴山の山の上に住んでいて、日々の食事を里の人から鉢で少しずつ分けてもらっていました。

しかしある時ふもとの長者が「今日は食事をあげたくない」といい、命蓮に食事を分けるのを断ろうとします。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

命蓮法力で鉢を飛行させる術を持っていました。

命蓮は鉢を長者の元に飛ばしますが、長者はその鉢を倉の中に閉じ込めてしまいます。
するとその倉が揺れ始め、鉢が転がりでた後、倉が飛んで行ってしまいます。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

この場面では飛んでいってしまう倉を見て、人々が慌てふためいています。

とんでもないストーリーですね(笑)

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

倉と鉢は命蓮の庵へと飛んでいきます。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

困ってしまった長者は命蓮の元へ行き、「倉を返してほしい」とお願いします。

そこで命蓮は「倉の中の米俵だけ返してあげるから、倉はおいていくように」と伝えるのです。
ここには「人は強欲になってはいけない(貯め置くようなことをしてはいけない)」という戒めが込められているのです。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

その次の場面で、命蓮は「鉢の上に米俵を1個置くように」と指示します。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

そうすると米俵は鉢に先導されて空へと飛んでいき、長者のもとへと帰っていくのです。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

空を飛ぶ米俵を不思議そうに鹿たちが眺めています。

絵巻がわかるポイント①場面転換の手法

ここからは”絵巻を読み解くポイント”を3つ、紹介していきます。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

まず1つめが”場面転換の手法”です。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

例えばこちらの場面。
右側に描かれているのは信貴山の山頂部分です。

そしてその左側には何も描かれず、空のような靄のようは状態が広がっています。
ここは薄くかすみを刷いているのです。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

じつはここが絵巻の中の場面転換の合図なのです。

山頂から麓までを実際の縮尺で描くわけにいきません。
そこでこのような技法が用いられるようになったのです。

この技法は『信貴山縁起絵巻』だけではなく、後の時代の作品でも多用されていきます。
この見方を覚えておくと、場面の変化・時間の変化が作中で行われていることが分かるのです。

絵巻がわかるポイント②異時同図法

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

2つ目のポイントは”異時同図法”です。
その字のまま「異なる時間を同じ画面(図)に描く技法」です。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

それが分かりやすく出ているのが『信貴山縁起絵巻』の3巻目『尼公巻(あまぎみのまき)』です。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

命蓮の姉の尼公が信濃の国(今の長野県)から奈良にやってきて命蓮を探す、というストーリーです。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

しかし弟の命蓮をなかなか見つけることができず、尼公は困り果ててしまいます。
そこで尼公は奈良の大仏殿に参籠して、大仏様に居場所を尋ねるのです。

そうすると「命蓮が信貴山で修業している」と夢のお告げがあり、そのおかげで訪ねることができたのです。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

じつはこの大仏殿の前で「異時同図法」が使われています。
丸で囲った箇所に女性がいますが、これは5人の女性がこの場所にいるのではなく、1人の女性の様々な時間の動きが表されているのです。

画面右から熱心にお祈りした後、眠くなってしまったのか横になり、そしてまたお祈りをして…

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

夢でお告げを得たのち朝を迎えて歩き出す、といった一連の動作です。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

大仏殿の建物から降りた尼公は信貴山の方へと向かっていくのです。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

まるでカメラの多重露出のような方法で、同じ人物の様々な動きを描いているのです。
このような表現をすることで、”動かない大仏”と”動く尼公”という対比の効果も出しています。

絵画は時間の流れを描くのは苦手なわけですよね。それを平安時代の絵師は異時同図であらわそうとしたのです」(解説・土屋貴裕氏)

絵巻がわかるポイント③吹抜屋台

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

ポイントの3つ目はこちらの作品を見ながらご紹介していきます。
紫式部日記絵巻断簡(むらさきしきぶにっきえまきだんかん)》という作品です。

現在は掛け軸として残されていますが、元々は絵巻の一部でした。
『源氏物語』の作者の紫式部の日記を絵画したもので鎌倉時代に描かれました。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

画面下部にいる男性は藤原道長です。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

後ろ姿の女性は道長の娘で、天皇の后(きさき)中宮彰子です。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

この作品は上から覗き見るようなアングルで描かれています。
これがポイントの3つめ”吹抜屋台”です。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

画面の上部と下部に灰色の柱が見えます。
もしこの上に屋根がかかっていたならば、このアングルから室内を見ることができません。

そこで屋根を取っ払って、上から見たように描くのが吹抜屋台です。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

このような吹抜屋台の技法は、主に貴族の恋愛や天皇の周辺といった、朝廷を舞台とした作品で使われます。
逆に、僧侶や武士を主人公にした作品では吹抜屋台の技法はあまり使われません。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

吹抜屋台の作品=貴族を主人公にした物語」と考えてほぼ間違いないといえるでしょう(もちろん例外もありますが)

今回の記事は一旦ここまでです。
パート2へと続きます。

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