2020年7月26日にNHKで放送された「日曜美術館」の【自然児、棟方志功〜師・柳宗悦との交流〜】の回をまとめました。
今回の記事はパート2になります。
前回のパート1はこちら☚からご覧いただけます。
番組内容に沿って、+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
《華厳譜》
柳宗悦の他にも日本民藝館に集う様々な人々と交流を重ねる棟方志功。
そんな中で彼は”仏教”をテーマにした作品に挑みます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
合計23図に及ぶ大作《華厳譜(けごんぷ)》です。
華厳経(けごんぎょう)の本尊で万物を照らす仏である「毘盧遮那仏(びるしゃなぶつ)」を中心に、様々な仏様や神々が対になるように描かれています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
日本絵画のモチーフでおなじみの風神と雷神の姿もあります。
ここでははやてのごとく駆ける「風神」と太鼓を連ねる「雷神」が描かれています。
柳は《華厳譜》の出来栄えに驚嘆しましたが、23図の内5図だけは気に入らず、棟方に「刻み直してはどうか?」と提案したといいます。
棟方は柳のアドバイスを悦んで聞き入れ、実際に作り直しました。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
こちらは現在の《華厳譜》の中にある薬師如来の像で、柳の勧めで作り直された後のものです。
では、最初に作られたオリジナル版とはどう違うのでしょうか?
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
こちらが当初彫られた「薬師如来像」です。
薬師如来の周りを大勢の女性が囲っています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
対になっている「大日如来」と並べて見てみると、どちらも大勢の人々に囲まれており、構図が共通しているのが分かります。
2枚一組のある種、ペアのような2つの作品ですが、柳は「人物があまりに騒々しく、にぎにぎしい。薬師如来なのだからもう少し静かなものにしなさい」という事で「薬師如来」の方だけを作り直すように言ったのでは?と棟方志功研究家の石井さんは考えます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
こうして作り直されたのが、こちらの薬師如来です。
周囲を囲っていた女性たちは省かれて、静かな画面になっているのが分かります。
柳にとっては作り直すことで、ペアが崩れる事は問題としていなかったのです。
一点一点の作品がどうあるべきかという事に重きを置いていたのだと考えられます。
また棟方は棟方で、柳から「これはダメだ」と言われたものに関しては、「作り替えた方が絶対に良くなる」という信頼があったのだと考えられます。
棟方志功の生活
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
当時の棟方の暮らしは妻と三人の子どもを抱え、貧しい暮らしをしていました。
そこで柳をはじめとする日本民藝館の中心メンバー達は、毎月資金援助をして棟方の暮らしを支えました。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
棟方が柳にあてた書簡には資金援助に対する感謝の言葉と、その援助を受けてより一層作品制作に邁進しようという決意が綴られています。
《東北経鬼門譜》
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
棟方は資金援助のおかげもあって、更なる大作を作ります。
《東北経鬼門譜(とうほくきょうきもんふ)》は120枚にも上る版画を繋ぎ合わせて作られた、六曲一双の屏風です。
作品が発表されたのは1937年(昭和12年)。
この当時棟方の故郷である東北は、凶作に見舞われる事が多かったといいます。
「仏の力で故郷を救いたい」という願いを込めて、棟方はこの作品を制作しました。
しかし柳はそんな棟方の思いを他所に厳しい評価を作品に下します。
作品の中で最も優れているのは両端の黒衣の人物だと言い放ちました。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
人物を黒く表す手法は、このあとの棟方版画の代表的技法の一つになっていきます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
結果、柳は《東北経鬼門譜》の中から気に入った所だけを別にして飾りました。
柳は棟方について次のように述べています。
「何をしでかすか分からない画家で、作品には無駄が出ている。
しかしその無駄の中にも素晴らしいものが混じっている。
だから明日の、また明後日の棟方が楽しみなのだ」
《観音経曼荼羅》
棟方はその後も仏教を主題とした大作を毎年のように発表していきます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
こちらの《観音経曼荼羅》は「観音経」を題材にしています。
観音菩薩が33の姿に変身して人々を救うと言われる、その33の姿を表しました。
「多くの人は絵を版画に仕立てる。
しかし棟方の作品は版画でなければ生まれない絵なのだ」
柳はこの作品について、これまでの棟方から一段進歩したと称えました。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
「白と黒の対比こそが版画だ」と考えていた棟方ですが、この作品では色彩を取り入れています。
これは柳で助言で始めた「裏彩色(うらざいしき)」という技法が使われています。
「裏彩色」とは絵の裏側に色を塗る技法で、独特の柔らかな色具合がにじみ出るのが特徴です。
以降、棟方はこの裏彩色を多用するようになっていくのです。
今回の記事は以上になります。
パート3へと続きます。
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コメント
[…] 今回の記事は以上になります。 続くパート2では、棟方が手掛けた作品についてまとめていきます。 こちら☚からご覧いただけます。 […]
[…] 2020年7月26日にNHKで放送された「日曜美術館」の【自然児、棟方志功〜師・柳宗悦との交流〜】の回をまとめました。 今回の記事はパート3になります。 前回のパート2はこちら☚からご覧いただけます。 […]