2020年2月18日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#337 誕生!アーティゾン美術館「開館記念展」〜ブリヂストン美術館が生まれ変わって新名所に!おなじみの名画から初公開作品も!】の回をまとめました。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい。
前回のパート3はこちらから☟☟
【ぶらぶら美術・博物館】アーティゾン美術館③【美術番組まとめ】
今回アーティゾン美術館では、メアリー・カサットをはじめとする印象派の女性画家の作品を力を入れて集めたといいます。
印象派の時代、19世紀後半には女性画家はまだ数えるほどしかいませんでした。
メアリー・カサット(Mary Cassatt、1844-1926)
ベルト・モリゾ(Berthe Morisot、1841-1895)
マリー・ブラックモン(Marie Bracquemond、1840-1916)
エヴァ・ゴンザレス(Eva Gonzales、1849-1883)
彼女たちの重要な作品をコレクションしています。
《バルコニーの女と子ども》ベルト・モリゾ
《バルコニーの女と子ども》1872年
ベルト・モリゾ
まずはその女性画家の中から、ベルト・モリゾの作品を紹介します。
描かれているのはモリゾの自宅のバルコニーです。
眼下には、トロカデロ庭園やセーヌ川、そして右奥に見える金色の屋根の建物はアンヴァリッドと呼ばれるパリの歴史的建造物です。
モデルはモリゾ本人ではなく、モリゾの姉とその子ども(モリゾからみた姪っ子)と言われています。モリゾは印象派のグループの数少ない女性画家の一人です。
母子や子どもなどを主題にした作品が良く知られ、それらは男性の画家の視点からはあまり見られない繊細さと穏健さを生み出しています。
またこの頃はエドゥアール・マネと親しい間柄にあり、双方の画家の間にも影響関係が見られる時期でした。
そしてモリゾはマネの作品のモデルも務めました。
《すみれの花束をつけたベルト・モリゾ》1872年
エドゥアール・マネ
パリ、オルセー美術館蔵
*今回の展示作品ではありません。
マネとモリゾの間には恋仲の噂も流れましたが、マネは既に既婚者のためなかなか振り向かなかったといわれています。
そしてモリゾ33歳の時に、マネの弟のウジェーヌと結婚します。
家庭にも恵まれたモリゾは、娘を出産します。
ジュリー・マネと名付けられた彼女も、モリゾと同じ画家に後々なるのです。
モリゾは黒い服装のイメージだから、
バルコニーの作品もモリゾだと思った!
服装が確かに被っていますが、これが当時の上流階級のファッションだったのです。
女性画家はなぜ少なかったのか?
当時のブルジョワのお嬢様が、習い事として絵を学ぶ事はよくありました。
しかし、そこから職業画家になるという人は滅多にいませんでした。
当時の女性には階級制度のようなものがあり、
働かないといけない女性(労働者階級)と、働いてはいけない女性(上流階級)に分けられていました。
働いてはいけない女性(上流階級)の人は外出する時も一人では絶対出歩かずに、必ず乳母や召使いといった働かないといけない女性を連れて外出していました。
今から考えるとすごい社会ですね・・・
モリゾは働いてはいけない女性(上流階級)だったので、逆に絵を描く余裕があったと言えます。
けれども画家というのは男性の仕事という考えが当時はあり、それが女性画家の台頭を阻んでいたのです。
そしてもう一つ着目すべき点は「手すり」です。
これが一種の境界線になっており、手すりの手前は「安全な世界」で、手すりの外は「危険な世界」を表していました。
手すりの手前の世界にいるというのが、モリゾのような女性の在り方であり生き方でした。
そしてそうせざるを得ない社会だったのです。
「手すり」がその超えていけない境界を表しているのです。
「守られている」と考えられる一方で、「捕らわれている」とも取ることができます。
この作品の女性が虚ろな表情なのは、その「捕らわれの身」である事をを表しているのかもしれません。
エヴァ・ゴンザレスについて
《眠り》1877-78年頃
エヴァ・ゴンザレス
アーティゾン美術館蔵
もう一人、別の女性画家でエヴァ・ゴンザレスという人がいました。
この人もお金持ちのお嬢さんで、モリゾと同じくマネの弟子でした。
エヴァ・ゴンザレスは、サロンへの出品を優先したため第一回印象派展への出品を断っています。
その後もマネと同様に印象派展には出品していません。
けれども彼女の作品はマネや印象派の画家たちの画風に近い点から、印象派の女性画家として取り上げられます。
マネはモリゾが弟子になりたいと言った時には、「自分は弟子は取らない」と拒否したにもかかわらず、エヴァ・ゴンザレスのときはあっさり弟子にしたので、ベルト・モリゾが怒ったというエピソードがあります。
この《眠り》という作品に描かれているのは、画家の妹のジャンヌです。
彼女が寝室のベッドで目を閉じ、横たわっている姿を描いています。
粗いながらも正確に対象を捉えたタッチは、師マネを彷彿とさせます。
エヴァ・ゴンザレスの代表作に《目覚め》という作品がありますが、こちらは対照的に若い女性が目覚める姿が描かれています。
この《目覚め》と《眠り》は、ほぼ同じ大きさのキャンバスに同じような構図で描かれている事から、対画をなす作品だと考えられています。
《目覚め》1876年
エヴァ・ゴンザレス
ドイツ、ブレーメン美術館
*今回の展示作品ではありません。
奇しくもマネに師事したモリゾとエヴァ・ゴンザレスの二人が一流の女性画家になったというのは面白い点です。
パート4はここまでです。
次のパート5でラストです。日本、そしてアジアの画家の作品をまとめていきます。
【ぶらぶら美術・博物館】アーティゾン美術館⑤【アジア・日本の画家】
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