2021年5月23日にNHKで放送された「日曜美術館」の【フランシス・ベーコンの秘密 バリー・ジュール・コレクション】の回をまとめました。
番組内容に沿って、+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
画家フランシス・ベーコン
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
20世紀で最も重要な画家の一人に数えられる、フランシス・ベーコン(1909-1992)。
彼の作品は人間の奥底に眠る、”恐れ”を目覚めさせます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
第一次世界大戦、第二次世界大戦と二つの戦争の時代を生きたベーコン。
こちらの作品では、終わる事のない殺戮の狂気を、見た事のない3頭の怪物に表しています。
ベーコンの言葉です。
「描きたいのは、恐怖より叫びそのものだ」
「絵画が暴力的なのではない 生こそが暴力的なのだ」
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
ベーコンは話上手でインタビュー等に饒舌に答える一方で、自分の作品や絵が生まれる背景については、一切語ろうとはしませんでした。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
2020年12月、日本で開催される展覧会のために、これまで表に出てこなかったベーコンの秘密に迫る作品群が初来日しました。
その名は「バリー・ジュール・コレクション」。
コレクションには、ベーコンが亡くなる直前まで密かに手元に残していた、ペイント跡の残る雑誌の切り抜きや写真。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
そしてベーコンが決して描かないと宣言し、この世に存在しないとされてきたドローイング作品もコレクションには含まれていました。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
これらの作品群はベーコンが亡くなる直前、友人のバリー・ジュールに手渡したものでした。
(写真右がベーコン、左がバリー・ジュール)
ジュール氏はその時の様子を次のように語ります。
「彼は私の車に書き込みされた雑誌やデッサン、たくさんの本、何枚かの古い絵を積み込むように命じました。それらのアートワークをどうしたらいいか尋ねると、
『バリー 君はどうすべきか知っている』
と言いました」
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
コレクションにはベーコンが自身の作風を確立する以前、若かりし頃の油絵も含まれていました
これらは生前、画家自ら処分したとされ、存在しないものだと考えられていました。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
ベーコンの著作権管理団体「フランシス・ベーコン・エステート」は、バリー・ジュール・コレクションについて、”いずれもベーコンの作品ではない”との見解を示しています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
ベーコンが信頼を寄せた友人に託した問題のコレクション。
その知られざる真実に迫ります。
ベーコンとバリー・ジュールの出会い
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
制作中の風景を見られることを極度に嫌ったベーコン。
これはそんな彼の作業風景を捉えた貴重な写真です。
この写真を撮影した人物こそ、バリー・ジュール・コレクションの所有者バリー・ジュールでした。
ロンドン、リース・ミューズ7番地のアトリエ。1961年からベーコンはここで寝起きしながら、亡くなるまでここで作品を描き続けました。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
左側に写る金髪で長身の男性がバリー・ジュールです。
写真の周りにベーコンの手が加えられたこのペイント作品も、ジュール・コレクションの中の一枚です。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
二人の出会いは1978年1月。
ある時、ジュール氏が車を止めて通りの窓を眺めていると、誰かが霧のかかった窓ガラスに人物や顔を描いていました。その人物こそベーコンだったのです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
アトリエの近所に住んでいたジュール氏は、その出会いをきっかけに14年間、1992年にベーコンが亡くなるまで身の周りの世話から、いつしか海外を共に旅行する、信頼し合う友人にまで仲を深めました。
ついにはベーコンのアトリエの鍵まで預かるようになり、画家が完成したものの、気に入らなかった作品をジュール氏が処分をしていたといいます。
神奈川県立近代美術館で開催されたベーコン展
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
バリー・ジュール・コレクションは、ベーコンが亡くなる10日前にジュールに贈られたものです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
2021年1月。
神奈川県立近代美術館では、そのバリー・ジュール・コレクションを基にしたベーコン作品の展覧会が開かれました。
これは日本では初の試みで、ジュール・コレクションもこれが日本初公開です。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
シンガポール出身の写真家レスリー・キー氏。
彼の作品は、光に満ちた華やかな色彩が特徴です。
レスリー氏はこの展覧会を誰よりも待ちわびていた一人で、今回、神奈川県立近代美術館の展覧会に足を運びました。
ベーコン 1930年代の油彩画
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
展覧会の冒頭展示は、ベーコンの初期の油絵の作品で、20代初めに描かれたとされるものです。
画家は生前、これら若い頃の作品は全て処分したと語っていました。
レスリー氏はジュール・コレクション所蔵の初期作品を見て、「(ベーコンの)原点が分かる」と言います。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
また、鮮やかな色彩は、最初からベーコン本人が持っていたものなのでは?と推察します。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
レスリー氏が着目したのは、”絵の中の線”でした。
この作品では、画面の中に”まっすぐな線”と”輪郭線”がありますが、キャリア後半の作品では、輪郭線がなくなっていきます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
ベーコンが自身の作風を確立した頃の作品。
レスリー氏が言うように、人物の周りに線が描かれており、それはまるで檻のようでもあります。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
デビュー以前の作といわれるジュール・コレクションの作品にも、それに通ずる線が描かれているのが分かります。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
「私から見ると刑務所(の鉄格子)みたい。一人一人みんな刑務所の中にいる人たちみたいに。それはまるで社会のなかで皆閉じ込められている」(レスリー氏)
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
こちらの《自画像》という作品は、コレクションが公になった際に、真っ先に公開された作品です。
まさに、ジュール・コレクションを象徴する一枚といえます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
あのピカソと並ぶ、20世紀最大の画家と呼ばれるベーコン。
そんな画家の初公開作品の発表に、美術界はわきたちました。
しかしベーコン特有のおどろおどろしさはなく、真贋が議論になります。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
その声に対して、コレクションの所有者のジュールは、一枚の宣誓供述書を提出します。
そこにはアトリエの向かいに務める女性が、「ベーコンがジュールの車に作品を入れたのを見た」という証言があります。
これに対して、ベーコンの遺産相続人はジュールに作品の返還を要求しますが、後に訴えを取り下げています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
ベーコンの著作権を管理する団体は、「バリー・ジュール・コレクションの作品群はベーコン以外の誰かが作ったと信じている」とコメントしています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
展覧会を企画した神奈川県立近代美術館の館長、水沢勉氏は次のように語ります。
「(本人がもう死んでしまっているので)どうしても真実はちょっと見えにくくなる。そのことに対していろんな反応が起きた。
しかし、ある意味その反応自体を見ていく事も面白いことです」
「あれほど生きている時から伝説のようなアーティストが死んだ。(そして、)見えないものが見えてきて、皆が『それはじゃあ何?』と思う。それは見る人によって、その見え方が違う。一流のアーティストであればあるほど、その部分は非常に複雑に反応を呼び覚ます。その経緯を含めて、興味深い展覧会なのです」
今回の記事はここまでです。
パート2へと続きます。
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コメント
[…] 今回の記事はパート2になります。 前回のパート1はこちら☚からご覧ください。 […]