2025年1月25日に放送された「浮世絵ミステリー」の【「べらぼう」コラボ 歌麿と蔦屋重三郎“革命”と“抵抗”の謎】についてまとめました。
番組内容に沿って、それでけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
イントロダクション
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。
”江戸時代のメディア王”こと蔦屋重三郎の波乱万丈な人生を描く、壮大なドラマです。
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
蔦屋重三郎こと、蔦重が世に送り出して大ヒットとなったのが浮世絵の美人画です。
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
蔦重は浮世絵師・喜多川歌麿とタッグを生み、江戸の人々を熱狂させる浮世絵を次々と世に出しました。
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
歌麿の現在確認されている錦絵(多色摺木版画)の作品数は約1900点にのぼります。
代表作に当時人気の三美人の町娘を描いた《寛政三美人》や、《ポッピンを吹く娘》などがあります。
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
こちらは《高名美人見たて忠臣蔵・十一だんめ》という作品に描かれている喜多川歌麿の自画像です。
身に着けている着物に「歌」と「麿」の文字が入っています。
鼻筋が通った、凛々しい顔つきをしています。
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
歌麿の後ろの柱を見ると、何やら文字が書かれています。
その中に「艶顔(えんがん)」と書かれていますが、これは「美男子」という意味です。
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
”最も有名な浮世絵師の一人”ともいえる存在の喜多川歌麿ですが、その生涯は多くの謎に包まれています。
生年もわからず、親の名前も記録がなく、出生地についても諸説あります。
また、妻子がいたかどうかも正確にわかっていません。
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
歌麿の画風についても謎な部分があります。
こちらは歌麿が二十歳前後の頃に描いたとされる役者絵です。
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より

今の私たちがイメージする歌麿の画風とは大きく違いますね。
歌麿は初期の頃は、こうした役者絵や安い挿絵を描いていました。
しかし蔦重との出会いがきっかけで大きな変化を遂げます。
蔦重×歌麿のタッグは、美人画の大ヒット作を次々と生み出し、浮世絵界の革命的な存在になったのです。
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
じつに歌麿の錦絵作品の8割以上が蔦重のプロデュースによるものです。
歌麿はなぜ蔦重と出会うことでここまで変わったのか?
またこのコンビがどうして浮世絵に革命を起こせたのか?
これらの謎に迫っていきます。
《歌撰恋之部 深く忍恋》
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
蔦重×歌麿のコンビで作られた美人画の代表作の一つを見ていきます。
こちらは《歌撰恋之部 深く忍恋》という作品です。
描かれているのはキセルを手にした女性の姿。
女性の一瞬の仕草を切り取ったような印象を受ける一枚です。
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
歌麿の代名詞ともいえる美人画の形式があります。
この作品のように顔を大きくとらえて描くスタイル、”大首絵”です。。
大首絵は役者絵では先行して行われてましたが、美人画の大首絵を描く浮世絵師はそれまでいませんでした。
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
この作品は2016年にパリで行われたオークションで、8800万円で落札されました。
この額は歌麿作品としては最高額です。
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
《深く忍恋》という少し意味深なタイトルの作品。
この女性はどんな女性か考えてみましょう。
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
女性の髪型は丸髷(まるまげ)と呼ばれるもので、既婚女性がする髪型です。
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
また口元に注目すると、お歯黒であることが分かります。
こちらも既婚女性がするものです。
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
既婚女性を描いた作品で、タイトルが「深く忍ぶ恋」。
夫ではない誰か、別の男性に思いを寄せているのかもしれません。
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
どこかミステリアスな魅力のある一枚ですが、それも8800万円という高額がついた理由なのかもしれません。
《婦人相學十躰・浮気之相》
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
続いての作品はこちらです。
描かれている女性は、前の作品よりも少し若い女性のようです。
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
こちらは『婦人相學十躰』と呼ばれるシリーズものの一枚です。
「相学(そうがく)」とは、人の外見から性格を判断する学問のことです。
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
その『婦人相學十躰』は中の「浮気の相」という作品です。

タイトルからして穏やかじゃない感じですね…
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
着ている浴衣ははだけていて、手拭いを持っています。
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
この状況から、女性はお風呂上りであることが想像できます。
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
振り返っている女性の表情から、その視線の先に誰か親しい人がいることが想像できます。
「浮気の相」というタイトルから考えるに、お風呂上がりのシチュエーションで、浮気相手から声をかけられ振り返った、そんな一瞬を描いているのかもしれません。
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
見る側が自由に想像することができるのが、歌麿の作品の魅力であり、彼の狙いだったのかもしれません。
そんな歌麿の絵は当時流行していた美人画とどこが違うのか見ていきます。
同時代の美人画
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
こちらは歌麿と同時代に活躍した鳥居清長が描いた美人画です。
3人の女性は全身の姿で描かれており、スタイルの良さが際立つ構図になっています。
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
歌麿の絵と比べるとその違いは一目瞭然です。
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
歌麿の描く女性の顔・表情はどこか含みがあるものだったのに対し、鳥居清長のほうは女性の顔はほとんど一緒で、感情的な部分も描かれてはいないように見えます。
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
これが歌麿の美人画の革命の一つです。
大首絵というスタイルで顔のアップを描くことで、人の表情や仕草をより丁寧に描き、その内面や性格、心情までをも表そうとしているのです。
そしてこの美人画革命は、蔦重と歌麿の二人三脚の力があってこそ生まれたものなのです。
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
「歌麿筆」のサインの下に、なにやらマークのようなものが見えます。
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
このマークは蔦重の版元印であり、これがついていることで蔦重のところから出版されたのが分かるのです。
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
さきほどの《婦人相學十躰・浮気之相》でも蔦重の版元印が確認できます。
そんな版元の蔦重と絵師の歌麿の関係が分かる作品があります。
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
これは浮世絵製作をする工房を描いた一枚です。
浮世絵製作は実際にはその多くは男性が行っていましたが、この絵では登場人物全員、女性に置き換えられています。
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
真ん中の奥の女性は、版木を彫っているところから彫り師だと分かります。
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
注目はこちらの2人。
片肘ついている女性が絵師・歌麿で、絵を見ているのが版元・蔦重です。
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
机の上にある文に「歌麿様」とあることからそれが分かります。
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
版元である蔦重は下絵のチェックをして、それについて絵師と相談しているのです。
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
版元の仕事は絵師と絵のチェックをするだけでなく、その工程までも取り仕切る、いまでいうプロデューサー的な存在でした。
画像出展元:テレビ番組「浮世絵ミステリー」より
歌麿と蔦重は二人で力を合わせて多くの浮世絵を手掛け、江戸っ子を熱狂させていったのです。
今回の記事はここまでになります。
パート2では、歌麿と蔦重、それぞれの生涯について詳しくみていきます。