2021年5月23日にNHKで放送された「日曜美術館」の【フランシス・ベーコンの秘密 バリー・ジュール・コレクション】の回をまとめました。
今回の記事はパート2になります。
前回のパート1はこちら☚からご覧ください。
番組内容に沿って、+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
ベーコンの生い立ち
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
ベーコンの生涯は波乱に満ちたものでした。
彼は1909年、厳格な父エディー・ベーコンのもとアイルランドのダブリンに生まれます。
病弱でぜんそく持ちだったベーコンは、ほとんど学校にも通う事ができませんでした。
17歳の時、母の下着を身につけているのを父に見つかり、家から追い出されてしまいます。
この事は生涯、彼の心の奥底に、罪悪感と疎外感を植え付ける事になりました。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
そこからベーコンのあてのない放浪生活の始まります。
身寄りのないベーコンが身を寄せたのは、夜の世界。同性愛者のコミュニティでした。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
法律で同性愛が禁じられていた時代から、自らがゲイであることを公表していたベーコン。
後にイギリスでは同性愛が合法化されます(1967年)が、ベーコンは「合法化される前の方が良い」と思っていたといいます。
自分の性的趣向が禁じられたものである、そういった考えの方が彼の感情をより高ぶらせ、更には制作過程にも反映されたのです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
家を追い出されたベーコンのそばには、献身的に尽くす乳母のジェシー・ライトフットがいました。
次の作品は、その乳母と非常に関係の深い作品です。
Xアルバム
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
続いては、「Xアルバム」と呼ばれる作品の展示室です。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
「Xアルバム」とは、乳母のジェシーの死に落胆したベーコンが、彼女の写真アルバムの表紙に大きく✕(バツ)を書き、抜き取った全ての写真台紙に、一枚一枚絵を描き連ねたものです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
「ドローイング作品は描かない」と生前話していたベーコン。
そんな画家の”存在しないはずの作品”が、まとめて見つかった事は事件でした。
レスリー氏はこれらのドローイング作品から、「ものすごいパワーを感じる」と言います。
ファン・ゴッホ・シリーズ
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
レスリー氏が次に注目したのは、あのゴッホを題材としたシリーズです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
ベーコンはゴッホを非常に好んでいました。それは作品のみならず、ゴッホが弟に宛てた手紙まで繰り返し読んでいたほどです。
こちらのベーコンの油絵は、ゴッホからインスパイアされて制作されたものです。
他の作品には見られない、強い色彩や鮮やかさが印象的です。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
確固たる地位を築いた一アーティストが、過去の巨匠の作品に挑む理由。
レスリー氏は「一度自分の世界から離れたいと思ったのでは?」と言います。
ゴッホをテーマにしたドローイングを描いていた時期、ベーコンの作風は大きな変化を遂げるのです。
《叫ぶ教皇》
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
ベーコンの作品といえば、こちらを思い浮かべる方も多いかもしれません。
代表作の一つ「叫ぶ教皇」です。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
この作品はベラスケスが描いた名画を題材にしたものです。
「世界最高の絵画作品の一つ」と言うほどまでこの絵に一目ぼれしたベーコン。
この作品によって「あらゆる感情が解き放たれた」とも話しています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
こちらはその下書きとも言えるドローイング作品です。
しかしこの絵にはベーコンにとって、別の意味(単なる下書きではない)があったとも考えられています。
水沢勉氏の考察
神奈川県立近代美術館館長の水沢勉氏は次のように述べています
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
油彩で描かれた完成画が頂点だとすると、鉛筆画やドローイングは、通常それよりも下にあるものと考えられます。
しかしベーコンの場合は、完成作品よりも上とか下とかそういう事ではなく、また準備過程のものでもなかったのです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
そこには油絵として完成させたものを、今の自分はどう見て、どう感じるか。
これはつまり”時間が完全に逆流している”のです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
そしてそこからまた別の感情が生まれる、その過程を行ったり来たりをしているので、ベーコンの中に一方通行の時間の道筋がある訳ではないのです。
酒井忠康氏の考察
美術評論家の酒井忠康氏はジュール・コレクションを見た時、「ショック、恐ろしいショックだった」といいます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
1972年、日本に初めてベーコンを本格的に紹介したのが酒井氏でした。
酒井氏はジュール・コレクションを見た時に「もっとしゃんとせえよ」、「頭でっかちでものを考えるなよ」等、様々なメッセージを受け取ったと言います。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
それまでは完成された、いわば代表的な作品を見てきた酒井氏。
ベーコン自身「デッサンはしない」と話していた事もあり、その奥の奥の奥にある原点にはあまり触れた事がなかったと言います。
広い意味でいえば、最もデッサンらしいデッサン、あるいは摩訶不思議なデッサンとも言えるジュール・コレクションの作品たち。
これはつまり「ベーコンにとってのデッサン」なのです。
ベーコンの作品にあるパワーやエネルギー、それらがどういう仕組みになっているのかを考えるきっかけになるのです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
そこには「対象を見尽くす」、「人間とは何かを問いただす」ベーコンの姿勢があります。
それにより、対象の裏にひそむ真実を描いているのです。
今回の記事は、一旦ここまでです。
パート3へと続きます。
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