【美の巨人たち】《曜変天目(稲葉天目)》①【美術番組まとめ】

美の巨人たち

2017年10月21日にテレビ東京にて放送された「美の巨人たち」の【国宝シリーズ③ 「曜変天目(稲葉天目)」】の回をまとめました。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。

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イントロダクション


国宝《曜変天目(稲葉天目)》12-13世紀
中国・南宋時代
静嘉堂文庫美術館蔵

本日取り上げるのは、国宝にも指定されている《曜変天目(ようへんてんもく)》。
手のひらに乗る宇宙』と称される見事な輝きを持つ茶碗です。
実は世界でも現存するのはここ日本だけ。
それもたった三点しかない、たいへん貴重な茶碗です。

《曜変天目》を所蔵する美術館

世界に3点のみ現存する国宝曜変天目》は以下の3つの美術館及び寺院に所蔵されています。

画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より

  • 東京、静嘉堂文庫美術館
  • 大阪、藤田美術館
  • 京都、龍光院(りょうこういん)

大阪の藤田美術館所蔵のものは、繊細な斑紋が美しいのが特徴です。
また、京都・龍光院のものは派手さは抑え目ですが素朴な味わいのある名品です。

今回は静嘉堂文庫美術館所蔵の、通称『稲葉天目』とも呼ばれるものについてまとめていきます。

静嘉堂文庫美術館について

静嘉堂文庫美術館は東京都世田谷区にある美術館です。
開館は1992年(平成4年)。
三菱財閥四代目の岩崎小弥太ゆかりの美術館です。

最寄りの駅は東急田園都市線の二子玉川駅です。
駅から歩くのは距離があるので、バスかタクシーでの行くのがオススメです。

《曜変天目(稲葉天目)》について

高さは7.2センチ、口径は12.2センチです。
僕は実際に見た事がありますが、「思ったよりも小さいな」という印象でした。
本当に”手のひらサイズ”です。

外側は漆黒ですが、縁の部分にはオーロラのような輝きが見られます。
内側を見てみれば、なぜこの茶碗が国宝なのかが一目で分かると思います。

画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より

光輝く美しい斑紋が見えます。
また見る角度を変えると、虹色に変化していきます。
まるで宇宙に散りばめられた銀河のような輝きです。

曜変天目の「」には、光り輝くものや宇宙の星といった意味があります。
現在は「変天目」と漢字で書かれますが、本来は「変天目」で、焼き物を焼く”窯(かま)”の漢字が使われました。
実はこの模様は偶然窯の中で変化してできたもので、人間の力で作り出せるのではない、いわば神の力が働いてできたとでも言えるようなものなのです。

《曜変天目》のルーツ

曜変天目が作られたのは700~800年前の中国です。
南宋と呼ばれる時代で、その頃日本は鎌倉時代でした。

場所は中国福建省の建窯(けんよう)という所で、焼き物の里として知られていました。
当時年間に何万個もの茶碗が作られたといい、今でもその残骸が残されています。

そしてその茶碗が使われていたのが、浙江省の天目山の寺院でした。
その寺院の留学したお坊さんが、お茶を薬として飲む文化と一緒に天目山から持ち帰ったのが由来です。

画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より

天目茶碗は、口のところが少しくびれた形をしているすっぽん口という特徴があります。
そして色は漆黒。
しかし、その中に不思議な模様が浮き出たものが曜変天目以外にも何点かあったのです。

画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より

こちらは『禾目天目(のぎめてんもく)』と呼ばれ、縦に細い模様が入ったものです。

画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より

一方こちらは油がはねたような模様に見えた事から『油滴天目(ゆてきてんもく)』と呼ばれています。


そして瑠璃色の光を放つ『曜変天目』でした。

なぜ中国には残っていないのか?

中国で作られたにも関わらず、中国には完璧な姿の曜変天目は残っていないといいます。
それはなぜでしょうか?

静嘉堂文庫美術館の河野元昭館長は以下のような独自の推理を立てています。

中国では特に漢民族を中心に「虹=良くないもの」と見なす伝統があったといいます。
虹は”男女の不貞”を想像させるものと見られていたのです。
なので、茶碗にその模様が現れると不吉なものとして処分としていたのだろうと。

一方日本はというと、虹は美しいものとして考えていました。
雨があがり、晴れ渡る空に掛かる虹を吉兆の証しと捉えていたのです。
それだけでなく、「やがて消えてしまう儚いもの」として尊ぶ気持ちがありました。

なぜ日本だけにあるのか?

日本で『曜変天目』の名前が初めて登場するのは室町時代です。
足利将軍家の所蔵の品を記録した『君台観左右帳記』の中に記載が残されています。
そこには「比較できるものがないほど立派な品である」と書かれています。

当時日本には10個ほど中国から曜変天目が入ってきたと言います。
その見事な輝きに、織田信長など時の権力者たちも虜になったといいます。

静嘉堂文庫美術館所蔵の曜変天目も、徳川将軍家に伝わったものなのです。

パート1は一旦ここまでです。
パート2へと続きます。こちら☚からご覧いただけます。

コメント

  1. […] 2017年10月21日にテレビ東京にて放送された「美の巨人たち」の【国宝シリーズ③ 「曜変天目(稲葉天目)」】の回をまとめました。 この記事は後編(パート2)になります。 前編(パート1)はこちら☚からご覧いただけます。 […]

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