【ぶらぶら美術・博物館】セザンヌの描いた怖い絵【怖い絵展⑥】

ぶらぶら美術・博物館

2017年11月24日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#253 英国の至宝が初来日!「怖い絵」展~名画に潜む“恐怖”を、ベストセラー著者・中野京子さん解説で!~】の回をまとめました。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
前回のパート5はこちら☚からご覧頂けます。

今回のパート6では近代絵画の父と呼ばれるポール・セザンヌ怖い作品をご紹介します。
その作品のタイトルはずばり・・・

スポンサーリンク

《殺人》


《殺人》1867年頃
ポール・セザンヌ
ウォーカー・アート・ギャラリー、リバプール国立美術館蔵

一見するとセザンヌの作品には見えないですね。
セザンヌはあのリンゴの絵で有名な画家です。


《りんごとオレンジ》1895-1900年
ポール・セザンヌ
オルセー美術館蔵

(*「怖い絵展」出品作品ではありません)

ポール・セザンヌ(Paul Cezanne、1839-1906)は近代絵画の父と呼ばれる画家です。
どうしてそのような呼ばれ方をするかというと、絵の中から感情や物語性を排除したという点において彼は新しく、キュビスムといった現代絵画に繋がる道を作った画家なのです。


《カード遊びをする人々》1892-95年頃
ポール・セザンヌ
コートールド美術館蔵

(*「怖い絵展」出品作品ではありません)

例えばこちらのセザンヌの有名な作品《カード遊びをする人々》を例に見てみましょう。
セザンヌ以前の画家であれば、トランプをする中で駆け引きをしている様子を描き、そこに物語性を表現していました。

しかし、セザンヌの作品には一切そういった描写はありません。
ただ単純にトランプをしている人がいるだけ、なのです。

この時代は写真が発明され、動画も出てきました。
絵画はどこに向かうべきなのだろう」と画家たちが模索していた時代に、セザンヌは一つの道筋を与えたのです。
要するに「意味のない絵、感情のない絵、物語のない絵」、これがセザンヌの新しさだったのです。

しかしこの《殺人》という作品はどうでしょうか。
セザンヌが20代後半から30代にかけての頃に描いたこの作品には、ものすごく感情が込められています

真っ暗闇で男女2人がブロンドの長い髪の女性を殺そうとしています。
波打ち際で今まさにナイフを振り下ろそうと。
しかし、ここでも下手さが出ておりこのまま振り落とすと腕にしかナイフは刺さりません。

強い風が吹いているのが、男の上着がなびいている所から分かります。
身体を押し付けている女性(スカートを履いているので)は、異様に頭が大きく、こちらもうまく描けていません。

アカデミックな意味での上手さはありませんが、けれどもそこが逆にこの作品の迫力になっているのです。
この作品が上手に描かれていたら、ここまでの迫力は伝わってこないでしょう。
山田五郎氏曰く「後の表現主義を先取りしている」との事。

若き日のセザンヌ

セザンヌは”下手を極めて新しくなった”画家と言えます。

彼は1861年、22歳の時にパリに出てきます。
しかし当時は全く評価がされず鬱屈していた頃は、この《殺人》のような暗く暴力的な作品ばかり描いていました。

今日の私たちの中にセザンヌに対してそのようなイメージがないのは、
①セザンヌが自ら後年になってそれらの作品を破棄した
②美術評論家が意識的にこれらの作品触れずにきた
この2点が理由です。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館 #253」より

セザンヌは中等学校時代に下級生であった作家のエミール・ゾラと親友の関係にありました。
パリに上京したのもそのゾラからの勧めがあったからです。
二人でパリに出て成功しよう」と鼓舞し合う仲でしたが、ゾラの方が一足早くベストセラー作家になります。

一方のセザンヌはいつまでたっても画家として芽が出ません。
二人の立場はどんどん変わり、経済的な格差も生まれ、次第にゾラセザンヌを経済的に援助するようになっていきます。

そんな中でゾラは自身の小説『制作』でセザンヌをモデルにしたと思われる画家を登場させます。
その扱いは酷く、「愛する女性を美しく描く事ができないから、キャンバスの中で暴力をふるう画家」と表現します。

その小説を読んだセザンヌは自分の事を馬鹿にしていると思い、激怒。
ゾラとも絶交するのです。

セザンヌにそんな時代があったとは知りませんでしたね。


《赤い肘掛け椅子のセザンヌ婦人》1877年頃
ポール・セザンヌ
ボストン美術館蔵

(*「怖い絵展」出品作品ではありません)

けれどもその後、後に妻となるオルタンス・フィケと同棲し、子どもが出来てからはこのような暗い作品は描かれなくなっていきました。

いかがでしたでしょうか。
この《殺人》という作品、セザンヌの作品だなんて言われないと分からような作品でしたね。

次のパート7で怖い絵展のまとめはラストです。
最後は《レディ・ジェーン・グレイの処刑》、この展覧会のメインビジュアルの作品についてまとめます。
こちら☚からご覧頂けます。

コメント

  1. […] いかがでしたでしょうか。パート5はここまでです。 続くパート6では、近代絵画の父と呼ばれるポール・セザンヌの描いた作品を見ていきます。 こちら☚からご覧頂けます。 […]

  2. […] 番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。 前回のパート6はこちら☚からご覧頂けます。 […]

タイトルとURLをコピーしました