【ぶら美】ハプスブルク展《Ⅲ.スペイン絵画の巨匠ベラスケス》

ぶらぶら美術・博物館

2019年11月19日にBS日テレで放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#327 国立西洋美術館「ハプスブルク展」】の回をまとめました。

番組内容に沿って、+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。

見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい。
前回のパート1・2はこちらからご覧頂けます☟☟
【ぶら美】ハプスブルク展《Ⅰ.フェルディナント2世のコレクション》
【ぶら美】ハプスブルク展《Ⅱ.ルドルフ2世のコレクション》

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イントロダクション:ベラスケス

続いては、今回の「ハプスブルク展」の目玉とも言えるベラスケスの作品についてご紹介いたします。
今回の展覧会では彼の作品が4点来日していました。
ベラスケスが活躍したスペインもハプスブルク家の支配下で、彼はフェリペ4世宮廷画家でした。

《青いドレスの王女マルガリータ・テレサ(1651-1673)》ベラスケス

 
《青いドレスの王女マルガリータ・テレサ(1651-1673)》1659年
ディエゴ・ベラスケス
ウィーン美術史美術館蔵

描かれている王女マルガリータ・テレサベラスケスが仕えたフェリペ4世の娘です。

ベラスケスの自由なタッチと色彩の配置が、離れて鑑賞した際にフォルムや質感を見事に伝えており、油彩技法の頂点を示す傑作とまで言われています。

王女が身に纏う青いシルクのドレスは、腰の部分から大きく左右に出て鐘形になっています。
これは当時流行した特異な形態で、グアルダインファンテ(子供隠し)と呼ばれます。
これは社会上認められない(非嫡子)の妊娠を隠すために考案されたという、根拠のない伝承があります。

まだ幼い王女にこのドレスを着せたのは、「子供隠し」という側面よりも、寧ろ子供を産むことのできる健康体で、安定的な王位継承をもたらしてほしいという、当時世継ぎに恵まれなかったハプスブルク家の願いだったのかもしれません。


《ラス・メニーナス》1656年
ディエゴ・ベラスケス
プラド美術館蔵

また、このマルガリータ・テレサはあの有名なベラスケスの《ラス・メニーナス》にも描かれています。
画面中央にいる白いドレスの女の子がそうです。
ちなみに《ラス・メニーナス》はスペイン語で「女官たち」という意味です。

マルガリータ・テレサはハプスブルク家にとってかなり待望の王女だったようで、ベラスケスは彼女の肖像画を3枚描いています。
(3歳のとき、5歳のとき、そして本作の8歳の時です)

なぜベラスケスは定期的に王女の肖像を描いたのでしょう?
そしてスペイン王家の肖像にもかかわらず、なぜウィーンの美術館がこの作品を所蔵しているでしょうか?

マルガリータは幼少の頃から、オーストリアハプスブルク家のレオポルト1世の所に嫁ぐことが決まっていたのです。
当時はもちろん写真はありませんので、将来の夫となる人に定期的に成長の様子を伝える目的で肖像画が描かれ、スペインからオーストリアに送られました

いわば「嫁ぎ先への近況報告」の役割を本作は担っていたのです。
ただ許嫁といっても、レオポルト1世は叔父さん(母親の弟)にあたり、歳も11離れていました。
なので結婚してからもずっと夫の事を「叔父さん」と呼んでいたそうです。

マルガリータ・テレサは15歳で嫁いで、1673年に21歳の若さで亡くなっています。

《緑のドレス王女マルガリータ・テレサ(1651-1673)》デル・マーソ

フアン・バウティスタ・マルティネス・デル・マーソ作、1659年頃、ブダペスト国立西洋美術館蔵

画像出展元:「ハプスブルク展」公式図録より

今回の「ハプスブルク展」では、こちらの《緑のドレスの王女マルガリータ・テレサ》も隣に展示されています。

パッと見ではドレスの色が違うだけで他はほとんど一緒に見えるかと思います。
実はこの緑ver.はベラスケスの一番弟子が、師匠の青ver.を模写したものです。
作者のデル・マーソベラスケスの娘婿でした。
そして後にベラスケス同様に宮廷画家となります。

実はこの緑ver.の方が青ver.よりも先に知られていました
8歳の王女の肖像をベラスケスが描いた」という記録が残っていたので、当初はこちらの緑ver.がベラスケスの描いた作品だと思われていました。

しかし1932年に《青いドレスの王女マルガリータ・テレサ》がウィーンの宮殿ホーフブルクのコレクションから発見されたのです。
青ver.の方が圧倒的に完成度が高く、その卓越した描写や表現力から、青ver.ベラスケスの作品で、緑ver.弟子による模写と結論付けられました。

僕もこの2作品を会場で見ましたが、やはり圧倒的に青ver.の方がうまかったですね。
ベラスケスがいかに優れた画家だったのか、その力量の差が(弟子の方には申し訳ないですが)出ています。

それでは続いてパート4へと続きます。
ヴェロネーゼの描いた「ユディト」の作品についての記事です。
【ぶら美】ハプスブルク展《Ⅳ.ホロフェルネスの首を持つユディト》

コメント

  1. […] パート2はここまでです。 パート3では、今回の「ハプスブルク展」のメインビジュアルにもなっているベラスケスの作品についてご紹介していきます。 【ぶら美】ハプスブルク展《Ⅲ.スペイン絵画の巨匠ベラスケス》 […]

  2. […] 見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい。 前回のパート3はこちらからご覧頂けます☟☟ 【ぶら美】ハプスブルク展《Ⅲ.スペイン絵画の巨匠ベラスケス》 […]

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