【アート・ステージ】アダム・エルスハイマー②【美術番組まとめ】

アート・ステージ

2019年10月5日にTOKYO MXで放送された「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」の【アダム・エルスハイマー】の回をまとめました。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。

見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい。
パート1はこちらからご覧いただけます。
【アート・ステージ】アダム・エルスハイマー①【美術番組まとめ】

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イギリスにおけるエルスハイマー人気

エルスハイマーは我々日本人にはあまり馴染みのない画家ですが、当時は《聖家族のエジプト逃避》で見られるような細密描写と、優れた風景画の名手として名声を得ていました。

彼の死後、その影響は18世紀のイギリス絵画にまで及んでいます。
イギリスではエルスハイマー人気が高く、彼の全作品(およそ40点)のうち、約3分の1がイギリスにあります。
寡作でありながら、後世に大きな影響を与えた画家と言えるのです。

日本での知名度が高くないのは、彼の作品の多くが宗教画である事が大きいでしょう。
日本人は多くの人が聖書を分からないため、宗教画が苦手な人が多く(私もまだ勉強中ですが)、印象派の作品や風景・風俗画を好む人が多いのです。

作品の総数や、部屋に飾る手頃なサイズというとフェルメールに近いものを感じますが、フェルメールの場合はほとんど宗教画がなかったので、日本人にとって分かり易く、人気が高くなったと言えるのではないでしょうか。

カラヴァッジョから受けた影響


《聖マタイの召命》1599年-1600年
カラヴァッジョ
ローマ、 サン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会蔵
エルスハイマーの作品に見られる明暗の対比は、ローマで一世を風靡していたカラヴァッジョに学んだものです。
(カラヴァッジョはエルスハイマーの7歳年上になります)

エルスハイマーはカラヴァッジョの劇的な明暗表現にプラスして、自身のルーツでもある北方の画家らしい詩情を合わせて、これまでにない画風を確立しました。

《ピレモンとバウキスのもとのユピテルとメルクリウス》


《ピレモンとバウキスのもとのユピテルとメルクリウス》1609-10年
アダム・エルスハイマー
ドイツ、ドレスデン絵画館蔵

そんなエルスハイマーの持ち味が凝縮された作品がこちらです。オウディウスの『変身物語』に基づく作品です。

こちらも小さいサイズの作品で、高さ16センチ半・幅22センチ強という手のひらサイズです。
画面左側に見えるのが、人間に姿を変えた神とその使いのユピテルメルクリウスです。

画面一番左で腰かけているのが、ユピテルです。
ラテン語表記にすると、”Jupiter“となることから、ジュピターと呼ばれることもあります。

元々はローマ神話の主神ですが、後にギリシア神話のゼウスと同一視されます。
同一視された背景には、共にルーツが古いインド・ヨーロッパ系の天空神であることが理由だそうです。

その隣にいるのが、メルクリウスです。ラテン語表記にすると”Mercurius“となり、そこからマーキュリーと呼ばれることもあります。
メルクリウスは、ローマ神話の中の12人の最高神の一人で、行商人や旅人の守護神と言われています。

その二人の神々を老夫婦(バウキスが老婆で、その夫がピレモン)がもてなしている場面です。登場人物を左から見ていくと、
ユピテルメルクリウスバウキスピレモン
となります。

この主題は西洋絵画ではよく描かれるテーマであり、ルーベンスも同じテーマで作品を描いています。

《ユピテルとメルクリウスを歓待するフィレモンとバウキス》
1620-25年頃
ペーテル・パウル・ルーベンス工房
ウィーン美術史美術館蔵

この作品については2020年1月まで開催されていました「ハプスブルク展」のレポートに詳細を書いてますので、よろしければ是非☟(^^♪

【美術展レポート】ハプスブルク展@国立西洋美術館

さて、エルスハイマーの作品に話を戻しましょう。

老夫婦の手厚いもてなしにくつろぐ神々の様子はリラックスしており、人間味に溢れています。
またずんぐりとした体形からは、イタリア・ルネサンスの理想化された人体表現から対極にある事がわかります。
このような描き方は、北方絵画の特徴です。

机の上のランプの光が、室内に見事な明暗の効果を生んでいます。
画面右下にはその光を受けた野菜が、リアルな描写で描かれています。

この作品が手のひらサイズである事を考えると、この食材は僅か数センチのスペースという事になりますが、それを感じさせない見事な表現です。
このような細密描写も北方絵画の特徴です。

エルスハイマーよりも100年ほど前に活躍したアルブレヒト・デューラーも同じ北方出身の画家で、彼もまた細密描写が得意でした。

アルブレヒト・デューラー(1471~1528)

明暗の効果が生み出す劇的な画面。
北方絵画とイタリア絵画の融合された《ピレモンとバウキスのもとのユピテルとメルクリウス》、まさにエルスハイマー魅力が凝縮された作品です。

いかがでしたでしょうか?
我々日本人にはあまり馴染みのない画家ですが、寡作にもかかわらず名だたる巨匠たちに影響をあたえたエルスハイマー
知名度とは比較できない、美術史上において重要な存在と言えるのではないでしょうか。

コメント

  1. […] パート1はいったんここまでです。 パート2へと続きます。 【アート・ステージ】アダム・エルスハイマー②【美術番組まとめ】 […]

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