【ぶら美】ロンドン・ナショナル・ギャラリー展②【美術番組まとめ】

ぶらぶら美術・博物館

2020年3月31日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#342 世界初!奇跡の大規模展「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」前編〜ルネサンスって何?!英国が誇る国宝級名作で西洋美術が丸わかり!〜】の回をまとめました。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
今回はパート2です。前回のパート1はこちら☚からご覧頂けます。

*開幕が延期となっております。詳細は展覧会公式HPをご確認ください。

スポンサーリンク

《聖エミディウスを伴う受胎告知》


《聖エミディウスを伴う受胎告知》1486年
カルロ・クリヴェッリ
ロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵

色彩が豊かでたいへん綺麗な作品ですね。
またそれだけではなく、細かな所までびっちりと描かれています。

描いたのはカルロ・クリヴェッリ(Carlo Crivelli、1430年頃?-1495年)でルネサンス初期の画家です。

知名度はあまり高くはありませんが、15世紀後半にヴェネツィアで活躍した非常に重要な画家です。
それと同時に非常に個性的な画家でもありました。

この画家は実は「人妻との不倫」で有名な画家なのです。
それにより有罪判決を受けているのが、彼の残っている最初の記録といわれいます。

そういった人物なので、女の人が妙にエロティックという特徴があります。

この作品で描かれている女性は聖母マリアですが、その雰囲気や佇まいはどこか妖艶です。
さらにこのマリア様にも見られますが、女の人の指がやたら長いというのも特徴です。

ここで彼の他の作品も見てみましょう。

画像出展元:wikipedia(カルロ・クリヴェッリ)より

(*ロンドン・ナショナル・ギャラリー展の出展作品ではありません)

これまたずいぶんと妖艶な表情をした作品ですね。
そして指も長い!

用いられた技法

聖エミディウスを伴う受胎告知》では油絵テンペラ両方の技法をミックスして描かれています。

そもそも油絵というのは、油で絵具を溶かしたものです。
一方のテンペラは、油の代わりに卵で絵具を溶いたたものになります。
テンペラの方が油絵よりも艶が出るという特徴があります。
また粘り気が強いので、細かい所描くのに適しています。

その代わり粘り気が強い分、絵具の伸びがイマイチなのと、乾くのが速いので大きな画面の作品をテンペラで描くのはかなり大変です。

どういった場面を描いている?

この作品はタイトルにもある通り、”受胎告知”の場面を描いています。


大天使ガブリエルが、マリアにお告げをしている所です。
面白い事に、ガブリエルの頭上には光臨を表すための”御盆”のようなものが付いています。

これはルネサンス特有の妙な現実性を持たせる表現といえます。
その他にも、空から鳩の聖霊が降りてきて聖母マリアの身に宿りますが、そこでも「空から降りてきて壁があったら通れない」という事で、わざわざ壁に穴が開けられているのです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館#342」より

そこは別にいいよって感じですけどね(笑)

ガブリエルの隣にいるのは誰?

一般的に”受胎告知”というと、大天使ガブリエル聖母マリア二人の登場人物で描かれます。


こちらはレオナル・ド・ダヴィンチが描いた《受胎告知》です。
やはり大天使ガブリエル聖母マリアの二人ですね。


しかし、この《聖エミディウスを伴う受胎告知》では大天使ガブリエルの横にもう一人います。
こちらの方こそ絵のタイトルにもある聖エミディウスなのです。
そしてその手には、街のジオラマのようなものが見えます。

この聖エミディウスは、元々この絵が描かれた町、アスコリ・ピチェーノの守護聖人なのです。

アスコリ・ピチェーノの街はローマ教皇の教皇領(ローマ教皇の支配する土地)でした。
それが1482年に教皇から町に自治権が与えられるようになったのです。
この絵はそれを祝って描かれた作品なのです。

ここでポイントとなるのが、”自治権を与えられた日”です。
それが3月25日だったのですが、その日は受胎告知の祝日でもあったのです。
つまりこの作品は街の自治権が与えられた事を祝うのと受胎告知の場面、その両方をミックスさせたものなのです。


絵の下の言葉には「教会の下の自由」と書かれています。
また三つの紋章は左から、”司教の紋章””ローマ教皇の紋章””アスコリ・ピチェーノの街の紋章”となっています。

画家の意図

作者のクリヴェッリは、画面の余白を残さないために様々なモチーフを描き込んでいます。


橋の上では手紙を読む人がいます。
これは手紙を通して”告知”を受け取った事を暗に示しています。

橋の下には空を見上げる人の姿が。
こちらは天からの光から知らせ(=告知)を受け取っているのです。

この作品ではアーチの下の部分消失点として、線遠近法の手法が取られています。
けれども、その後に見られる「画面奥をぼかす」といった表現はまだ見られません。

線遠近法だけを用いて描いても、イマイチ奥行き感が生まれないのです。
この時代からどんどん、空気遠近法など更なる遠近法の技術が発達していくのです。

今回はここまでです!
つづくパート3では、その遠近法の技術と共に絵画がどのように進歩していったのかをまとめていきます。
こちら☚からご覧頂けますので、どうぞ(^^♪

コメント

  1. […] パート1は一旦ここまでです。パート2へと続きます。 こちら☚からご覧ください(^^♪ […]

  2. […] 番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。 今回はパート3です。前回のパート2はこちら☚からご覧頂けます。 […]

タイトルとURLをコピーしました